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 日経ネットマーケティング2008年10月号の特集は「ターゲティング最前線~エリアや行動でユーザーを狙い撃て!」。取材活動を進めるなかで,サイトの集客や売上拡大に効果を上げたさまざまな事例や意外な事実が見えてきた。

 新築・中古住宅の売買・賃貸事業を展開する大和ハウス工業グループの日本住宅流通は2007年6月,自社サイトを全面的に刷新した。これによって2007年度通期のサイト訪問者数は前年度比で約1.5倍まで増加。受注額も関西地域は1.4倍,関東地域では14.3倍にまで増加した。

 多くの企業は定期的に自社のWebサイトをリニューアルする。それでもここまで劇的な効果を生み出すケースはまれだ。

 同社がWebサイトの刷新時に取り入れた技術。それがエリアターゲティングだ。サイバーエリアリサーチ(静岡県三島市)が提供するIPアドレスデータベース「SURFPOINT」を導入し,アクセスしてきたユーザーの地域を判別。表示するコンテンツをユーザーの地域によって切り替える仕組みを整えた。

 エリアターゲティングと不動産業の相性は確かにいい。大阪に住む人に東京のマンションを積極的に薦めても,転勤する人などでもない限り反応することはない。エリアを限定することでコンテンツや広告の効果は飛躍的に向上する。

 エリアターゲティングに注目する業界は不動産だけにとどまらない。現在,飲食店や金融機関,EC(電子商取引)サイトなど,さまざまな業界でこのエリアターゲティングに注目が集まっている。

 例えば,全国で洋服を販売するECサイトでエリアターゲティング技術を活用すれば,同じタイミングでも,北海道からアクセスしてきた人には長袖の服を,沖縄からアクセスしてきた人には半袖の服をお薦めすることが可能になる。

 また,エリアと天気情報などをひも付けてコンテンツを差し替えることも可能。実際,キリンホールディングスの「キリンブランドについて」のコーナーでは,IPアドレスからアクセスした人のエリアを判定し,その場所の天気情報に合わせて,雨が降っているときは雨が降っている背景,晴れているときは晴れている背景と画像が変化する仕組みを取り入れている。アクセスする時間帯や季節でも背景画像は変化する。

 インターネットはそもそも既存のメディアと異なり,県境や国境というエリアの概念を壊した存在。その可能性に多くのユーザーが歓喜し,また,企業が参入して,発展を遂げてきた。それが,ここにきて,あえて“境界線”を引くことで新たな価値が生まれ始めている。

 ところがここに,意外なプレーヤーが存在する。

 IPアドレスを基にエリアターゲティングを行う特許は,実はニュースサイト「J-CASTニュース」を運営するジェイ・キャストが持っている(特許第3254422号「ウェブページ閲覧方法およびこの方法を用いた装置」)。この事実を知ったとき,正直,なぜニュースサイトの運営会社がこんな特許を?とびっくりしたが,取材してみて疑問はすぐに氷解した。

 「エリアという概念がなかったのが長らくインターネットの弱点だった」と語るジェイ・キャスト社長の蜷川真夫氏は,元朝日新聞でアエラ編集長経験者。「新聞だってテレビだって,全国一律のコンテンツや広告が流れているわけではなく,ローカル番組やローカル広告が入っている」(蜷川氏)と語る。インターネットではなぜそういった広告がないんだろう,と思ったのが特許を申請するきっかけだったという。

 考えてみれば,確かに新聞やテレビ,そしてラジオにはローカルコンテンツやローカル広告がある。私の出身地である宮崎では,電器屋さんの店舗の前に店主が立った画像とBGMだけというシンプルなローカル広告がよく流れていた。

 ジェイ・キャストはこの特許におけるライセンス契約を現在,先述のサイバーエリアリサーチのほか,ダブルクリック,サイバーウィングの3社のみと締結している。同社は今後,ライセンス契約を進めていく考えを示しており,特許の存在を知らずにエリアターゲティングの機能を使っている企業は対応を迫られるかもしれない(上記3社のクライアント企業を除く)。

 最後に同社が持っているさらに隠れた財産を紹介しよう。それは1999年5月20日に出願して2008年3月28日に登録された「ウェブ情報提供方法およびウェブサーバ」(特許第4101394号)。これは簡単にいうと,携帯電話から利用するインターネットにおいて,基地局が端末に割り当てるIPアドレスや識別IDから,端末の接続されている基地局を判別し,基地局が属する地域に対応したコンテンツを送信するというもの。

 ジェイ・キャストはこれら二つの特許に関し,台湾,韓国,中国でも既に特許を取得している。今後,携帯電話事業者をはじめ,コンテンツプロバイダーや広告代理店などは同社の動向を見守る必要がある。

 日経ネットマーケティングでは,こうした最先端の広告事例や動向を1日で把握できる「NETMarketing Forum Fall 2008」を11月5日に開催する。興味のある方はぜひご参加いただきたい。