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 「最近,システムを自社で内製する企業が増えていない?」

 2008年10月15日号の日経コンピュータで特集した「システム内製化 再び!~自社開発を強化する12社の決断」は,編集部内のある記者が発したこの一言が始まりだった。部内の記者や編集委員などから続々と「システム内製」の情報が集まってきた。かく言う筆者も内製回帰への兆しを感じていた。ベンダーの評判を聞いても“要領を得ない”ユーザーに最近連続して出会っていたからだ。例えば,以下のようなやり取りだ。

記者:ベンダーの提示するシステム開発のコストについて,妥当性の判断が難しいとの声を聞きます。どのように判断していますか?

A社:お役に立てなくてすみません。オープン化を機に内製にしました。社内の人件費が開発費で,ベンダーに支払うのはサーバーなどハードウエアの費用のみです。

 このように内製に取り組むユーザー企業では,システム部門のプレゼンスが格段に向上している。新システムの投入や改修など案件をこなすスピードが上がり,利用部門や経営陣から頼りにされるからだ。さらに筆者は,内製は日本の国力アップにつながるとも感じた。今回はこの考えを紹介したい。

その1:地方の活力向上

 筆者は取材を進めるうちに1つの傾向に気づいた。内製に取り組む取材先ユーザーの約半数が東京・大阪以外に本社を構えているのである。大手ITベンダーの体制が手薄なところと見ることもできる。

 例えば,総合繊維のセーレン(福井県),小売業のトライアルカンパニー(福岡県),給湯器のノーリツ(兵庫県),ヤマハ発動機(静岡県),ローム(京都府),ワコール(京都府)といった状況である。人材派遣のフジスタッフも栃木県の本社にシステム部門を置いている。

 内製に取り組むためには,スキルの高いシステム部員をそろえなくてはならない。システム内製が進むことで,こうした人材をユーザー企業自身で育成しようとする土壌ができる。雇用の創出にもつながる。ベンダー依存型のシステム部門に比べて,部員の頭数が必要となるからだ。

その2:グローバル化の加速

 世界に拠点を持つ企業にとって,システム内製はグローバル化を加速するエンジンになり得る。グローバル対応も日本のITベンダーの取り組みが足りていない分野だ。

 今回取材したユーザー企業の数社が,「海外の現地ベンダーにシステム構築を依頼したものの,満足のいくシステムができなかった」と口をそろえる。重要なデータのフォーマットがまったく違う,肝となるロジックがきちんと実装されていない,といった問題が起こっているのだ。

 こうしたことから日本のシステム部門が海外に出向いて内製システムで置き換え,ワールドワイドのシステム統一を果たしている。セーレンやヤマハ発動機などがそうだ。本社のノウハウを世界各国に迅速に横展開でき,ひいては企業の競争力強化につながる。

その3:IT業界の競争力強化

 内製が進むことでベンダーの仕事がなくなるわけではない。内製はユーザー企業が主体的にシステム開発を進めること。要求定義や設計、実装まですべてをこなすユーザーもいるがそれだけではない。ベンダーとともに設計や実装に取り組むケースも多い。

 ユーザー主体の契約となることで,仕様変更や開発規模の膨張などベンダー側の負うリスクが減る。例えば,問題プロジェクトの収拾のため,ベンダーが有能なシステムエンジニアを他の案件からはがして問題プロジェクトにつぎ込むといったことが減るだろう。これがベンダーの採算改善,競争力の強化につながる。

 また、内製でスキルを上げたシステム部員がユーザー企業からベンダーに転職すれば,人材の流動が活発化する可能性がある。その逆もあるだろう。ユーザー企業がベンダーからスキルのあるエンジニアを大量に確保するというケースだ。

転換には数年かかる

 もちろんシステム内製にいたる道筋には,苦難も待ち構えている。特集記事でも「イバラの道」として紹介したが,転換には最低でも2~3年はかかる。上述したような日本の国力向上への波及効果は,その先に出てくるものだ。

 どちらにしても筆者は内製の波は確実に来ていると思う。システム案件が増え,システム部門は利用部門や経営陣から早期の実現を求められているからだ。もちろん,コアでないシステムをアウトソースする内製ユーザーも少なくない。

 取材に応じていただいた多くのシステム部門長が「内製は正直大変だが,部員のモチベーションが格段に上がった。もはや内製以外は考えられない」という。10社以上の企業が内製という高いハードルをどのようにクリアし果実を得たのか。詳しくは日経コンピュータの10月15日号をお読みいただければと思う。