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 検索サイト「goo」が発表した2008年年間検索キーワードのランキングに「地図」が13位に入った。ちなみに1位は「yahoo」,2位は「YouTube」だ。「地図」は昨年の19位からのランクアップでもある。

 地図というやや地味(?)な単語が頻繁に検索されているのは,地図サービスがより身近な存在になってきたからだろう。「Googleマップ」や「マピオン」が既に日常的に使われるサービスになっている一方で,「Googleストリートビュー」のプライバシー侵害問題が物議を醸している。良い面でも悪い面でも地図は注目を集めている。

 地図への興味・関心は今後さらに加速しそうだ。2007年4月以降,携帯電話にはGPS(全地球測位システム)塔載が必須になっているほか,ニコンの「COOLPIX P6000」のようなGPS内蔵デジタルカメラが発売されている。GPSがあれば地図サービスは位置連動サービスにもなる。

 英Air Semiconductorが開発する「Airwave 1」のように低消費電力で常時測位するGPSチップも登場しているので,将来,様々な携帯デバイスがGPSを塔載するようになるだろう。それに伴い,地図サービスや位置連動サービスの利用頻度はますます高まるはずだ。

場所に合わせて音楽が切り替わる

 では,地図サービスや位置連動サービスにはどのような未来像を描けるだろうか。取材をしていると,いろいろなアイデアを持った人に出会う。

 例えばNTTドコモ モバイルデザイン推進室の藤田大作氏が考えるのは,“軌跡”のマッチングによるユーザー間のコミュニケーション。携帯電話が一定間隔でGPSによる位置情報を取得し続ければ,自分が普段どのように移動しているのかの軌跡が分かる。「JR中野駅→JR新宿駅→紀伊國屋書店新宿本店」といった自分のよく行く軌跡が統計的に見えてくる。

 その軌跡を多くのユーザーがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のようなサイトにアップロードしあえば,自分と似たような軌跡,つまり似たような行動パターンを持つ人に出会える。軌跡データのマッチングは技術的には問題ないという。似た軌跡を持つものは興味対象も近いと推測できる。物理的にも近くに住んでいるはずなので,新たな“対面の”人間関係を生み出すキッカケになるだろう。

 もっとコンテキスト(文脈)やストーリーを持った地図サービス,位置連動サービスが必要だと考えるのは東京大学空間情報科学研究センターの有川正俊准教授だ。「現在のサービスのように,地図の上に『イエローページ』の情報が散らばっているだけのようなものではこれ以上発展しないのではないか」(有川准教授)という。

 ここでいうコンテキストやストーリーを持つ地図とは,個人の経験や記憶,趣向,情感とひも付いた場所や,映画・小説の舞台,あるいは史跡や遺跡などだ。

 GPS付きの携帯音楽プレーヤを使い,東京・銀座を歩いているときは銀座の街に合った曲がかかり,有楽町に近づくと有楽町にあった曲に自動的に切り替わる---。このような位置情報を加味した「プレイリスト」の編集機能や,位置連動の音楽配信サービスがあり得るのではないかという。

 あるいは,旅行のルートと撮影した写真や動画,または音声による旅行中のコメントなどをマッピングした自分だけの地図を作れる,作った地図を他人と共有できる,といったサービスも考えられるだろう。既にGoogleマップの「マイマップ」機能で一部が実現されている。

地域振興にも役立つ?

 このように現実の空間にデジタル情報をマッピングできる技術基盤が急速に整いつつある。あまり知られていないようだが,国も昨年,「地理空間情報活用推進基本法」を作り,地図サービスや位置連動サービスを支援する考えだ。

 特に筆者が期待したいのは,これらの技術を地域振興に使うことである。例えば,埼玉県鷲宮町にある鷲宮神社は人気アニメ「らき☆すた」の舞台として有名な場所で,休日には多くのファンが訪れる。これは“聖地巡礼”と呼ばれ,2008年11月22日の日経流通新聞によると,鷲宮町にもたらされた聖地巡礼の経済効果は1億円を超えるという。

 ここでGPSや電子コンパスなどの位置・方角取得技術や画像認識・シーン認識技術,そしていわゆる拡張現実技術を使えば,いろいろな仕掛けを実現できそうだ。思い付くのは,神社の鳥居を携帯電話のカメラで撮ると,ライブビュー動画にらき☆すたのキャラクターの映像がCGでオーバーレイされる,境内に入るとキャラクターの声優の声で神社の解説が聞ける,などである。

 このような仕掛けがあれば,来訪者により濃密な体験を提供できるので,リピーターも増えるだろう。ごく普通の街を魅力的なテーマパークに変えてしまう可能性があるのだ。