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 「アプリケーション・ソフトをUSBメモリーから起動して使う」「音楽/動画のようにWindowsアプリケーションをストリーミング配信して実行する」---。これらは一見すると,互いに独立した無関係な話題であり,仕事とは関係の薄いエンターテインメント系の話題のように見える。ところが,実はエンタープライズ(企業情報システム)分野のメインストリームとも言える“仮想化”に関係した話題なのである。

 上述した2つの機能は,仮想化の中でも“アプリケーション仮想化”に分類される。アプリケーション仮想化とは,パソコンやWindows OSからアプリケーションを切り離して(つまり仮想化して)管理/運用できるようにすることを指している。OSとセットでアプリケーションを考える必要がないため,Windowsアプリケーションの扱いが容易になる。クライアントPC側での使い勝手を高める仮想化分野の1つに位置付けられている。

 以前は,アプリケーション仮想化を実現する技術は一つしかなかった。具体的には,米MicrosoftのマルチユーザーOSである「Windows NT Server, Terminal Server Edition」(TSE)や「Citrix MetaFrame」(現在のXenApp)といった,シンクライアント(RDP/ICA端末)からの利用を前提とした,OSのマルチユーザー環境である。

“アプリケーション仮想化”の意味が拡大

 この状況に“変革”が起こった。アプリケーション仮想化が示す意味が,大きく拡大されることとなったのである。

 先陣を切ったのは,従来からのアプリケーション仮想化ベンダー,米Citrix Systems。2007年4月に国内で出荷した「Presentation Server 4.5」(現在の名称はXenApp)に,アプリケーション仮想化の形態を拡大する“ストリーミング”機能を追加したのである(関連記事:シン・クライアントでは動かないソフトも使える,シトリックスがソフト配布機能を追加)。

 Presentation Serverに追加したストリーミング機能とは,専用のストリーミング再生クライアント・モジュールをインストールしたWindowsマシンに対し,Windowsアプリケーションの実行イメージを配信する,というもの。本来であればインストールが必要なWindowsアプリケーションをネットワークを介して分割転送(ストリーミング)し,あたかもインストール済みのアプリケーションであるかのようにクライアントPC上で実行させられる。

 ストリーミング機能そのものは,特に大騒ぎするほどのことではない。ところが,視点を少し変えると,「OSからアプリケーションを分離独立させている」ことになると気付かされる。すなわち,ストリーミングはアプリケーション仮想化の文脈で捉えることができる,というわけである。これにより,マルチユーザーOSの画面を転送するやり方とストリーミンングという,2つの異なるアプリケーション仮想化が並存することになった。

ストリーミングに加えてポータブル化も仲間入り

 この「Windows OSにあらかじめインストールしておく必要がない」という“文脈”を適用すると,ストリーミングのほかにも,アプリケーション仮想化の意味を拡大させることができる要素技術があることに気付く。こうしてがぜん注目を浴びることになった,3つ目のアプリケーション仮想化分野が,“ポータブル化”である。

 ポータブル化は,主にノートPC向けにUSBメモリーから起動できるようにしたアプリケーションとして,比較的良く知られている(参考サイトのPortableApps.com)。

 典型的なポータブル化では,Windowsのシステム・レジストリやファイル・システムを,それらを利用するアプリケーションに対して仮想化する。こうした仕掛けにより,あたかもアプリケーションがOSにインストール済みであるかのように動作する。

 これにより,異なるバージョンのアプリケーションをDLLをコンフリクト(競合)させることなく同時に利用できるようになるほか,ネットワーク経由のアプリケーション配布などにも応用できる。事前のインストールが必要ないという可搬性に光が当たるわけだ。

仮想化ベンダー各社が製品ラインップを拡充

 このように,ストリーミングとポータブル化は,アプリケーション仮想化における,一大トレンドとなっている。

 例えば,米Symmantecでは,ポータブル化ソフトの米Altirisと,ストリーミング・ソフトの米AppStreamを,相次いで買収した(関連記事:シマンテックがアプリケーション・ストリーミングで旧AppStream製品を出荷)。また,マシン仮想化やデスクトップ仮想化の雄である米VMwareも,ポータブル化ソフトの米Thinstallを買収している(関連記事:ヴイエムウェア、クライアント仮想化の新機軸「VMware View 3」を提供開始)。

 ストリーミングとは異なるが,実行イメージをネットワーク配信する興味深い試みもある。米VMwareである。同社はストリーミング市場には参入していないが,VMware仮想マシン・イメージそのものをダウンロード配信する“オフライン・デスクトップ”機能を提供。普段はデータセンター側のハイパーバイザ上で動作させているVMware仮想マシン・イメージを,端末(Windowsクライアント)へとデータ移動して稼働させる機能である。

 オフライン・デスクトップでは,バージョン管理システムのように,ユーザーが明示的に仮想マシン・イメージをチェックイン/チェックアウトして利用する。最初のチェックアウト時には数Gバイトの仮想マシン・イメージをフルにダウンロードする必要があるが,その後のチェックインや2回目以降のチェックアウト時には,差分のみを転送するだけでよい。クライアントPC側のディスクに仮想マシン・イメージがキャッシュされるからである。