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 米国発の世界同時不況が容赦なく企業の広告・宣伝費を削っている。テレビ、新聞、雑誌など既存メディアへの広告出稿が控えられているのは当然のこと、不況の波はインターネット広告にまで影響を及ぼしている(関連記事:インターネット広告、2008年11月はマイナス成長)。

 広告は企業そのものや商品のメッセージを「広く告げる」ことが目的。注意や関心を喚起し、興味を持たせ、消費を刺激することで市場を拡大させる効果がある。その広告・宣伝費が削減されるということは、市場が縮小してもやむなしという判断だ。辛く長く冬の時代に突入したと感じる企業のマーケティング担当者も多いだろう。

 ただ、「マーケティング活動」=「広告予算を消化する」ことではないし、広告のみが市場を拡大する唯一の手段でもない。表向きは広告予算を削減して身を縮めているように見えても、実は「攻め」の姿勢を崩していない企業は数多くある。

 この不況下における「攻め」とは何か。それは、自らが「メディア」を作り出すこと。消費者との接点を既存メディアに頼らず、コンテンツを継続的に提供したり、ユーザー同士が交流するコミュニティを運営したりして自らがメディアとなり、顧客と直接的かつ継続的な関係を構築することだ。

 企業のほとんどは自社サイトを持っている。企業サイトの多くは、企業概要、事業概要、事業所案内、商品・サービスの案内、ニュースリリースなどで構成されている。必要最低限の情報をきっちりと分かりやすく掲載すること。それがこれまで企業サイトに求められてきたことだ。

 Webサイトは接続環境さえあれば、誰でもいつでもどこからでもアクセスできる。見方を変えれば、常に消費者と接点が持てるわけだ。こうした意識を明確に持つ企業の一つに、本田技研工業がある。

 本田技研工業のWebサイト「www.honda.co.jp」のトップページは2007年、4100万人の訪問者が訪れ、サイト全体のページビューは7億に達した。「数多くのメディアに使っていた費用の一部を自社サイトに置き換えることで、コミュニケーションコストの削減を目指している」(本田技研工業日本営業本部宣伝販促部ホームページ企画ブロックブロックリーダー営業主幹の渡辺春樹氏)といい、自社サイトをほかのメディアと同じレイヤーに置き、明確なKPI(重要業績指標)を設定して運用している。

 一方、ユニクロも自社サイトのメディア化を進めている企業。同社は時計とダンスと音楽を組み合わせたブログパーツ「UNIQLOCK」、世界各国のユニクロ社員が登場する「UNIQLO JUMP」、ユニクロ製品の体験者の声を集めてビジュアル化した「UNIQLO TRY」など、さまざまなWebプロモーションを展開している。特にUNIQLOCKは世界三大広告賞を総なめにしたことで有名だ。

 同社はこうしたWebプロモーションを集約する位置付けとしてデスクトップアプリケーション「UNIQLO SHOW WINDOW」を2008年11月にリリース。ユーザーが好きな映像をスクリーンセーバーとして選択できるようにしている。ファーストリテイリング、グローバルコミュニケーション部部長クリエイティブ・マネジメントディレクターの勝部健太郎氏は「ユーザーに一番近い場所を陣取ることが目的のメディア」と語る。

 UNIQLO SHOW WINDOWには今後、自社製品の販促を目的とした情報を「広告」として露出する予定。メディアを作り、人を集め、ファンを創出した後、そこに広告を出す感覚で販促活動を行う。ファンが集まっているのだから、おのずと販促活動も相性がいいというロジックになる。

 新規顧客の開拓より既存顧客満足度の向上へ。これが不況時におけるマーケティング担当者の役目だ。これまでの焼畑農業的思考を捨てること。樹木や草木を燃焼させて、肥料にし、作物を植え、収穫したら次の土地に移る。これを繰り返す焼畑農業は、ある意味、広告・宣伝活動や販促活動を繰り返して新規顧客開拓にいそしむ企業活動そのものだ。

 広告・宣伝活動で効率が悪くても広く網をかけ、販促活動で効率が悪くてもダイレクトメールやちらしを大量配布する。顧客との接触は基本的に一回限りで継続的な関係性を構築せず、いったん野に放った後、またアプローチを試みる。予算が潤沢にあるときにはこうした効率性を多少無視してでも市場拡大につながる活動は支持されがちだが、不況時は話が別だ。

 自社サイトをメディア化するのにも、当然費用や手間が発生する。コンテンツの拡充、コミュニティの運営、顧客と直接やり取りする仕組み作りなど、やるべきことはたくさんある。ただ、ここで投下する予算は決して、焼畑農業的なものではない。一瞬で注目を集め、一瞬で忘れ去れていくプロモーションにかける費用と比べ、作り上げたものは半永久的に残る。

 出口のいまだ見えない不況だ。ここは一つ、自社サイトのメディア化に取り組んでみてはいかがだろう。