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 通信のトラフィックは増え続けている。だから,企業はより高い伝送能力を持つネットワークに移行していく。この傾向はネットワークに限らない。コンピュータのCPUだってそうだ。とにかく速いほうがいい。情報を伝送したり処理したりする装置の能力は,ひたすら直線的な進化を目指す。要するに,「速い」とか「高密度」というものだ。

 日経NETWORK 2月号の特集は「次世代イーサネットのすべて」と題し,さまざまなイーサネット関連の技術を紹介している。中でも最新のトピックとして,100Gビット/秒の高速なイーサネット規格や伝送技術について大きく取り上げている。

 100Gビット/秒の伝送技術は,大きく二つの技術に分けられる。一つはIEEE802.3baで検討されているものだ。通信事業者やデータセンターのネットワークなどで利用されることを想定しており,伝送距離は40kmまでとなっている。IEEE802.3baは2010年に標準化作業が完了する予定だ。

 もう一つの技術は,40km以上の長距離で100Gビット/秒の伝送を実現するためのもの。こちらはIEEEではなく,光伝送装置ベンダーや研究機関が独自に開発している技術だ。KDDI研究所やカナダのノーテルなどがそれぞれ開発しており,実用化される時期はまちまちだ。主に通信事業者の長距離伝送ネットワークで利用されることになる。

開発ベンダーの経営悪化に思う

 100Gビット/秒というと,従来の最大伝送速度から一気に10倍も高速になる。もちろん新しい技術なので,導入時のコストも割高なものになる。しかし,コストが高いものをどれだけの企業がこの全世界的な不況下で導入するのかはちょっと疑問だ。そもそもターゲットとなるのは通信事業者のネットワークであり,あちこちの企業に売れるものではない。もちろん,通信事業者だけが好況なわけでもない。

 なんだか悲観的な意見で嫌になる話だが,100年に一度とも言われるこの不況となると,すぐに出口が見つかる気がしない。製造業では生産ラインを止める企業も続出している。設備投資どころの話ではない。景気はトラフィックのように右肩上がりを続けるわけではない。100年に一度の不況であるならばなおさらだ。どこまで肩が下がり続けるのか,まだ底は見えていない。

 …などと思いつつ特集記事の校了作業を進めていたら,ノーテルの経営が悪化しているという情報が入ってきた(参照記事:ノーテル破たん、国内への影響は当面なし)。

 「ノーテルは2009年末に100Gビット/秒の長距離伝送を実用化する」という話を聞いていた矢先だったので非常に驚いた。100Gビット/秒の長距離伝送を開発しているベンダーや研究機関の中でも,ノーテルは実用化の時期が早いと思われる企業だ。100Gビット/秒伝送のコヒーレント受信に使うためのASICも開発しており,技術的にも一歩抜きんでている印象を受けていた。

 日本法人の広報担当者は「現時点では開発スケジュールの変更はない」と話している。ノーテルの開発スケジュールに変更がなくても,その100Gビット/秒伝送装置を導入する通信事業者の経営状況はどうなのだろうか。少々心配になるところである。

社会インフラとしてのネットワーク

 しかし,より高い伝送能力を持つネットワークは景気にかかわらず必要とされている。通信のトラフィックは増え続けているし,インターネットの活用範囲はさらに広がり続けている。かつては,郵便は郵便配達が,電話の音声は電話線が,テレビ番組は電波が運んでいた。今はこれらすべてがインターネットのトラフィックとして扱えるようになった。また伝送するデータも,テキストから静止画,動画へとどんどん大容量化している。動画にいたってはハイビジョンも伝送する時代だ。こういった大容量化の傾向は今後もますます加速するだろう。

 今やネットワークは,電気やガスなどと肩を並べる社会インフラになったとも言える。ネットワークは電気やガスと同様,一日でも止めることはできない。伝送能力の高いネットワークは不況下であっても求められている。不況を理由に開発の歩を緩めるべきではない。技術開発をするベンダーや研究機関,そしてその顧客となる通信事業者には,社会インフラを担う企業としてこの不況を乗り切ってもらいたいと思う。