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 「ビジネスアナリシス(Business Analysis)」やその知識体系である「BABOK(Business Analysis Body of Knowledge)」,ビジネスアナリシスを実行する担当者の名称「BA(Business Analyst)」の知名度が,日本でも徐々に高まりつつある(関連記事)。昨年12月には,BABOKの作成やビジネスアナリシスの普及活動を行っているカナダの国際非営利団体「IIBA(International Institute of Business Analysis)」の日本支部も設立された(関連記事)。

 先日,このビジネスアナリシスを教育会社の米IIL(International Institute for Learning)で13年前から教えている,ビジネスアナリシスの専門家Steven P.Blais氏にインタビューする機会があった。今回はその内容を紹介しよう。Steven P.Blais氏は現在,BA(Business Analyst)向けの実践的な書籍を執筆中で,4月に刊行予定だという。

Blaisさんのプロフィールを教えてください

 ずっと,ITの開発やマネジメントに携わってきた。GSA(米連邦政府調達局)で働いていたこともある。ビジネスアナリシスについては,13年前からIILで研修コースを担当している。私がコンサルティングをしていた企業からトレーニングを依頼され,それがうまくいって次々に依頼が来た。それがビジネスアナリシスを教えるようになったきっかけだ。

Blaisさんの定義では,BA(Business Analyst)とは何をする人でしょう。

 私の定義では,BAとはビジネス上の問題を解決し,組織に価値をもたらす人だ。

加IIBAは,「CBAP(Certified Business Analysis Professional)」と呼ぶ,BAの認定資格制度を実施しています。これは,プロジェクトマネジメントの資格「PMP(Project Management Professional)」のようにメジャーな存在ですか。

 答えはノーだ。PMPと違って,CBAPはまだ一部の地域でしか知られていない。IIBAがCBAPを始めてから約2年しかたっていないのだから,それも当然だろう。ただし,BAのニーズ自体は急拡大している。企業から見るとBAは不足している。

それでは,BAの役割は誰が担うべきでしょう。企業内にBAを置くべきでしょうか?それとも,外部のコンサルタントに依頼できるのでしょうか。

 BAは企業の中で雇うか,育てるしかない。なぜなら,BAは「企業全体の価値」を考えなければならないからだ。これができるのは企業内の人間だけ。コンサルティング会社のコンサルタントなど,外部の人間にはできない。

企業全体の価値を考えるという意味では,EA(Enterprise Architecture)の考え方に近いですね。

 EAはビジネスアナリシスよりも少しテクニカルというだけで,コンセプト自体はとても似ている。実際,肩書きは「Enterprise Architect」だが,やっている仕事はBAというケースも多い。Enterprise Architectに限らず,BAはいろんな肩書きで呼ばれている。「Business Systems Analyst」「Information Architect」「Software Architect」などだ。

ビジネスアナリシスは,要求工学(Requirements Engineering)の考え方にも近いように思います。両者の違いは何しょうか。

 確かに,要求工学とビジネスアナリシス,要求工学におけるRA(Requirements Analyst,要求/要件を決める人)とBAは似ているが,大きく異なる点もある。

 まず,RAはシステム開発などのプロジェクトが始まってから,要求を定義し仕様にまとめるが,BAはプロジェクトが始まる前から活動する。具体的には,プロジェクトを立ち上げるかどうかの判断材料を「ビジネスケース」としてまとめる。

 実際にプロジェクトが始まれば,BAは要求定義や要求仕様書の作成などRAと同じような作業を行うが,プロジェクトが終わってもBAの仕事は終わらない。ここも大きな違いだ。プロジェクトが終わればRAの仕事は終わるが,BAはプロジェクト終了後も,ソリューションがビジネス環境でちゃんと成果を出しているかどうかを検証する必要がある。さらに,BAは企業のプロセス改善にもかかわる。要するに,BAはRAよりも仕事の範囲がはるかに広い。また,BAは企業内の人間にしかできないが,RAは外部の人間にもできる。

BAに必要なスキルは何でしょう。

 コミュニケーション能力と分析能力だ。ITエンジニアの中にはこうした能力を持っていない人もいる。そういう人は,BAには向いていない。つまり,BAは誰でもなれるものではない。

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 BAについて米国の生の状況を聞く機会はあまりないので,記者にとって,Blaisさんの話はとても興味深いものだった。特に「BAは外部の人間にはできない」とはっきりと断言していたことは,印象に残った。

 企業の問題解決のために,プロジェクトを立ち上げるかどうかを判断し,プロジェクト開始後はきちんと要求を定義し,プロジェクト終了後はその成果を検証する---このBAの役割は,企業のシステム部門の本来あるべき姿にほかならない。システム部門の強化が日本におけるBAの普及につながる---改めてそう感じさせたインタビューだった。