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 このところ,リスク・マネジメントに対する関心がかなり高まってきたように感じる。経済環境が悪化している状況で,システム開発プロジェクトにおけるリスクがより大きくなりつつあることも一因だろう。

 ただし,あるプロジェクトマネジャはこう打ち明ける。「現場は忙しいから,何か問題が起こってからでないと対策に腰を上げる気にならない。リスクを感じていても,『まだ時間がある』『まだ顕在化していない』と対処を先送りにしがちだ」。リスク・マネジメントがなかなか定着しない理由の一つである。

 実際,リスク・マネジメントにしっかり取り組んでいるプロジェクトがどれだけあるかというと,まだ少ない。プロジェクトマネジャが中心となってリスクを洗い出し,それらが顕在化する確率と影響の大きさを評価して,重要なリスクが顕在化したときの対策案や予防策をあらかじめ立てておく――という一連の検討作業を,型通りに1~2回実施した後,形骸化してしまうパターンが多いという。

 なにしろ,リスク・マネジメントを継続的に実施しようとすると,結構手間がかかる。検討項目としては,契約,見積もり精度,要件の安定度,プロジェクト体制,スケジュール,スキル(プロジェクトマネジャ,協力会社,技術)など様々で,重要な検討項目に絞った独自のチェックリストを用意しているシステム・インテグレータは多い。ただ,リスクを考え始めると「あれも,これも」ときりがない。リスクの評価も,決してマニュアル通りにはいかない。その検討時間が効果に見合うかどうか,プロジェクトマネジャたちにはまだ迷いがある。

みんなリスクに気付いているのに…

 ところで,「リスクを読むには,豊富なプロジェクトマネジメント経験が必要」というイメージが強いが,現場でもリスクを敏感に感じている。しかも,その予感は結構当たる。「なんとなく危ないなと思っていたら,後になって,やっぱりトラブルが起こった」という話は,プロジェクトマネジメントにかかわっていない人からでもよく耳にする。

 『ITプロジェクトの見える化 上流工程編』という本にも,こんな話がある。ある会社で失敗プロジェクトを分析したところ,プロジェクトマネジャを除くメンバーの7~8割が,比較的早い段階で「このプロジェクトはうまくいかないと感じていた」という。あくまでも感覚的な話であり,重要なリスクを見過ごしていることも多いが,プロジェクトマネジャ自身に起因するリスクを観察しているなど,意外に鋭い見方をしたりする。

 つまり,プロジェクトマネジャからメンバーに至るまで,みんながそれぞれにリスクを感じていることもあるわけだ。それなのに,分かっているリスクが顕在化して問題を起こすのはなぜか。前述したように「忙しい」「まだ時間がある」「まだ顕在化していない」といった気分により,手を打たずにいるからだろう。リスクを感じてはいるが,マネジメントができていない。

30プロジェクトで赤字なし

 このマネジメントの不足を補うために,あるシステム・インテグレータではリスク・マネジメントに精通した4人のベテラン・スタッフを活用している。彼らが昨年レビューした約30の大規模プロジェクトは一つも赤字にならなかったという実績がある。もちろん彼らだけの手柄ではないが,リスク・マネジメントが作用していることは間違いない。

 レビューの仕方は,プロジェクトの主要工程の区切り目にプロジェクト・レビューの場を設け,そこにベテラン・スタッフが立ち合う。プロジェクトマネジャの報告を聞きながら,リスク・マネジメントの観点からベテラン・スタッフがいろいろと質問を出し,その受け答えを通してリスクを浮き彫りにするという。

 話を聞く限りでは,ごく一般的なプロジェクト・レビューと大差ないように思われた。それでなぜ赤字が出なくなるのか,ベテラン・スタッフにただすと,「プロジェクトの外にいる人がレビューすると,リスクをあいまいに放置しておけなくなる」「リスク・マネジメントには,やはり独特の見方が必要だ」という2つのポイントを挙げた。

 リスク・マネジメントには様々なやり方があるが,高い専門性を持つスタッフが外部からリスクを見る方法は効き目があるようだ。