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 ソフトバンクBBは本心では,通信回線部分の料金も自社の収益となる既存のADSLサービスに,多くのユーザーを止まらせたいと考えているようだ。そのために2008年12月には,月額料金が最低980円まで割り引く2段階定額制プラン「Yahoo!BB ホワイトプラン」を投入し,FTTHサービスに比べた割安感を訴求するなどの手を打っている。

 しかし現実には,ADSLからFTTHへと多くのユーザーが移行していく,大きな流れには逆らいきれない。実際にYahoo!BBの会員数は2007年初頭をピークに減少が続いている。ADSLが主力のYahoo!BBから,他のISPが手がけるフレッツ光対応サービスへとユーザーが流出しているのだ。

 そこで今回,ソフトバンクBBはユーザー流出を防ぐため,自らもフレッツ光対応サービスを受け皿として用意した。Yahoo!BBのアカウント数をこれ以上減らさないためには,ARPUが低くなっても背に腹は替えられないということだ。

 ただし,あくまで主要サービスはADSLという姿勢は変えない。このために新サービスのプロモーションの規模は控えめになっているのである。

NTTの独占をアピール?

 二つ目の,NTT東西の市場独占性を高めることで,逆に総務省の規制発動を引き出す,という見方については,どうだろうか。

 仮に,400万件以上いるYahoo!BBのADSLユーザーが,本格的にフレッツ光へと移行していけば,かなりのインパクトとなる。1000万件超に達したNTT東西の全体のフレッツ光の回線数が,さらに4割近くも底上げされるのだ。

 NTT東西のFTTH市場におけるシェアは,既に70%超と高い。これが9割近くまで押し上げられてしまうかもしれない。そうなれば,総務省からNTT東西に対して,独占傾向の強化に歯止めをかけるための,何らかの手が打たれる可能性もある。

 だが現時点では,ソフトバンクBBがそのような展開を狙っているそぶりはない。前述の通り,フレッツ光対応メニューの販売にそれほど積極的ではないことが,それを表している。「販売チャネルもフレッツ光対応サービスはYahoo!Japanのページからの申込みだけに限定し,量販店などの店頭では従来通りADSLが中心」という。あくまでADSLユーザーの減少を止めることを優先し,FTTHへの移行を促進することなどは考えていないのだ。

 さらに,もし現状よりも光ファイバの開放政策が強化され,ダークファイバを利用しやすくなったとしても,ソフトバンク自身がそれを活用して,自前のFTTH回線網を構築したいと強く思っているかどうかは定かでない。最近のソフトバンク・グループからは,通信事業者でありながら,通信設備への投資に対して消極的になっている様子が目にとまるからだ。

「プラットフォーム開放」要求の布石か

 例えば移動通信事業を担当するソフトバンクモバイルは,自社のネットワークを使わず,他社から移動通信網を借りるMVNO(mobile virtual network operator)型のサービスに乗り出した(関連記事)。

 料金プランを見ると,自社網よりも提携した相手の網に,より多くの通信トラフィックが発生するような設計をしている。トラフィックの処理は相手の通信設備に任せるが,両社それぞれのサービスのセット契約なので,契約ユーザー数は稼げるという形になっている。設備投資で通信網を増強することよりも,コンテンツの流通やユーザー数の上乗せを優先している状況が見えてくる。

 ソフトバンクBBも今後は,通信設備の増強よりも,コンテンツ配信などのプラットフォーム機能の拡充や,アプリケーション・サービスの提供先の拡大に傾注していく可能性が高い。NTT東西に対して,フレッツ光網の上でソフトバンクBBのアプリケーションやプラットフォームを提供できるように,ネットワーク機能の開放を強く働きかけていく展開が予想される。

 例えば,Yahoo ! BB 光 with フレッツの加入者が使える0AB-J番号のIP電話サービスは,現状ではNTT東西の「ひかり電話」しかない。ソフトバンクBBからすれば,自社で用意している「BBフォン光」を使ってもらいたいだろうが,それを提供するための相互接続の手段は,NTT東西のフレッツ光網には用意されていない。

 また,ADSLのYahoo!BBユーザー向けに提供しているソフトバンクBBのIP放送サービス「BBTV」も,Yahoo ! BB 光 with フレッツの加入者は利用できない。

 技術的には,NTT東西が用意するIP放送用ホスティング・サービスを使えば可能だが,これはあくまでユーザー向けにNTT東西が販売しているサービスだ。ソフトバンクBBは,通信事業者同士のネットワーク相互接続によってこれを実現しようと狙うだろう。

 やはり,フレッツ光への対応はソフトバンクにとって,次の闘争への布石となっているように感じられるのである。