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 ドイツやスペインなどに続き,遅ればせながら日本でも,太陽光発電による電力を電力会社が高値で買い取る制度が2010年にも創設される。2009年に4年ぶりに復活した太陽光発電設備の補助金制度と併せ,国による本格的な普及施策が動き出した。

 エネルギー安全保障の気運が高まり,世界各国で太陽光発電の積極導入策が取られている。2000年以降,日本メーカーは太陽電池セルの市場で高いシェアを誇ってきたが,ここにきて国際競争力は急速に揺らぎつつある。2005年には約半分あったシェアが,2007年には約4分の1まで下落。ドイツや中国のメーカーが世界的な需要増を受け,生産量を伸ばしているためだ。

 こうした中,日本政府は,環境関連ビジネスで雇用を生み出すグリーン・ニューディールの一環として,太陽光発電産業のテコ入れに乗り出した。2020年までに日本メーカーの世界シェアを3分の1まで引き上げることで,約10兆円の経済効果と最大約11万人の雇用創出を見込んでいる。

余剰電力をいくらで買い取るのか

 太陽光発電の普及施策としてよく知られているのは,ドイツが最初に導入したFIT(フィード・イン・タリフ)という投資促進プログラムだ。これは,個人や企業が太陽光発電設備を導入することによって得られた電力を,電力会社が破格の固定価格で買い取るというもの。その一方でドイツの電力会社は電気代を家庭用・産業用ともに大幅に引き上げた(一般家庭で月々500円ほどの値上げ)。要するに,割高な太陽光発電の導入コストを,国民が薄く広く負担した格好である。

 ドイツ国内の急激な需要増に伴い,ドイツの太陽電池メーカーのQ-Cellsは急成長を遂げ,2007年にシャープを抜いて太陽電池セルの生産量で世界トップになった。また,太陽電池をはじめとする同国の自然エネルギー関連産業は既に25万人の雇用を生み出し,自動車産業に次ぐ基幹産業に育ちつつある。

 こうしたドイツの実績を見て,日本政府も5年ほど遅れてFITの導入に踏み切った。従来,電力会社による買い取り価格は1kWh当たり23円だったが,太陽光発電による発電コストが1kWh当たり49円程度(2007年度実績)かかるため,あまりメリットがなかった。そこで,買い取り価格を電力料金の2倍程度(50円弱)まで引き上げることで,家庭での導入意欲を喚起すると見られる。

 ただし,電力会社に買い取ってもらえるのは,家庭での使用分を差し引いた余剰電力だけ。一般的な投資回収期間は15年程度と試算され,従来の20年超よりは短くなるものの,消費者の財布のひもをゆるめるには不十分との声もある。ドラスティックな普及シナリオを目指すなら,投資回収期間が10年以下になるような高額買い取りか,発電全量の買い取りを行うべきというわけである。

 実際,ドイツでは制度を導入した2004年には,1kWh当たり70円という破格の高値買い取りを実施した。だが,買い取り価格が上がれば上がるほど,電力会社はその分を電力料金に転嫁するわけで,消費者にとっては痛し痒しである。マンションなど太陽光発電設備を設置できない家庭では買い取ってもらえる電力がないのに電気代だけが増え,不公平が生じる。

太陽光バブルが崩壊したスペイン

 ドイツに続いてFITを導入したスペインでは,こうしたマイナス面が早くも表面化した。2008年に2GW(ギガワット)という想定を大きく上回るペースで太陽光発電システムの普及が進み,装置価格が高騰するなどバブル的な様相となった。このためスペイン政府は同年9月に制度の見直しを決定,10月以降の買い取り価格を大幅に引き下げた。このため2009年の導入量は500MW(メガワット)まで落ち込む見通しだ。本家のドイツも徐々に買い取り価格を下げつつあり,累積発電量の増加ペースにかつてのような勢いはない。

 こうした先例に鑑み,日本の政府は太陽光発電の導入量と電力コストとのバランスを熟慮したうえで制度設計をすべきだろう。いずれにせよ,補助金や買い取り制度などの普及施策は期間限定のもの。太陽光発電をはじめとする自然エネルギー関連事業を日本の基幹産業として育て,自律的な成長軌道に載せるためのシナリオが求められている。