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さらなる透明性の確保:「開示」から積極公開へ

 最後に「4.さらなる透明性の確保」について見てみよう。調査結果からは「情報公開が進んでいる(と国民が感じている)国ほど、行政への信頼度が高い」という傾向が見て取れる(図4)。「情報を公開するだけでなく、分かりやすく使いやすくなっていること自体が行政の説明責任に対する評価を挙げているのではないか」と吉竹氏は調査結果を読み解く。

図4●「説明責任」と「市民からの信頼獲得」との関係
図4●「説明責任」と「市民からの信頼獲得」との関係

 以上4つのポイントのうち、電子行政について特に改善の優先順位が高いのは、「1.市民の視点に立つ」と「4.さらなる透明性の確保」ではないかと筆者は感じている。

 「1.市民の視点に立つ」について吉竹氏は、「ITツールを持たない人に対するキオスク端末や、外出困難者に対する訪問サービス、電話による窓口用意するといったことも必要だ。やりすぎると『不平等だ』ということにもなるが、日本の行政サービスは個々人に注力したサービスではなく、一つのシステムでまとめてやろうとする傾向がある」と分析する。

 吉竹氏は、先進事例としてシンガポールのCPF(中央積立基金。雇用主および従業員双方に義務付けられている社会保障貯蓄制度)を挙げる。CPFではオンラインサービスのほか、オフィスのキオスク端末を置いたり、外出が困難な利用者に対して訪問サービスを提供しているという。Webサイトでは全利用者に「マイページ」を提供し、利用履歴の閲覧などができるようにしているという。

 シンガポールでは、市民に広く利用されているサービスに関しては、NRIC(National Registration Identification Card)という国民登録番号をベースに、ID/パスワード形式での認証(SingPass)を実施している。CPFのマイページについての認証方法も同様だという。

 日本では現在、類似の取り組みとして「電子私書箱」の検討を進めている。全国民ではなく希望者だけが利用するようにしたとしても、ICカードを使った厳格な認証にこだわるようなら普及には苦労するだろう(関連記事)。

 「4.さらなる透明性の確保」については、これまでも筆者は何度か取り上げてきた。自治体のサイトを見てみると、まだまだ行政や地域活動の情報提供が不足している(関連記事)。政府のポータルサイト「e-Gov」の検索の使いにくさについては、筆者も含め(関連記事)、いろいろなところで指摘されている通りである。

 電子行政の政策では、ワンストップサービスなどの「利便性向上」の施策がどうしても優先されがちだ。そちらのほうが予算規模が大きいため、「市民の視点」とは別の観点から関係者の関心が高まるという面もあるだろう。しかし、住基カードが受け入れられず、年金問題で国民の不信を買っている政府がまず取り組むべきは、積極的な情報公開による信頼回復に向けた取り組みではないだろうか。

 ここにきて、国民の利便性や政府の効率性に直結する「国民ID」の議論が活発になってきている。この制度についても、情報公開によって信頼度を高めなければ導入・定着させるのは難しいだろう。

 なお、この調査結果は人口規模の小さな国の評価が高い傾向がある。だからといって、「日本はこのままでよい」とはならないはずだ。このことは最後に付け加えておきたい。