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 この際だからハッキリ言おう。Windows 7は素晴らしいクライアントOSである。筆者はこのところ毎日,Windows 7 RC(製品候補版)を自分のネットブックに入れて触っているが,毎月発行している日本で唯一のLinux雑誌「日経Linux」の記者である筆者にさえこう言わせてしまうほど,その完成度は高い。

 リリース版(RTM)の1歩手前である現段階において,Windows 7はWindows Vistaよりも起動や動作が速く,かつWindows XPのように安定している。Vistaベースなので,新規OSにありがちなドライバ不足などの問題も少ない。好みによるが,見た目もなかなかイケている。XP並みに長く愛されるOSになるかどうかまでは分からないが,少なくとも今年後半,Windows 7がパソコンOS分野を席巻するのは間違いない。発売日の10月22日(米国での予定)前後には,さぞかし盛り上がることだろう。

Windows XPは,もはやLinuxの「到達目標」ではない

 一方,筆者の仕事場であるLinux分野では,残念ながらWindows 7の発売に匹敵するようなイベントは,2009年中には予定されていない。では,Linuxユーザーは当面寂しい思いをしなければならないのだろうか。

 実は,そんなことは決してないと筆者は考えている。むしろ,Windows 7が出る今年後半こそ,Linuxがさらに躍進するチャンスが来て注目を集めるとにらんでいる。Linuxユーザーの中には新Windowsの登場を苦々しく思う人もいるようだが,筆者は逆だ。「間違っても発売延期になりませんように」と切に願ってさえいる。

 ひと口にLinuxといっても,サーバー向けかクライアント向けかで用途がはっきり分かれる。だが,ことクライアント向けLinuxに限っては,長年の間,世界中でロングセラーとなったWindows XPが「追いつき追い越すべきターゲット」だったことに異論を挟む余地はない。Linuxの標準的なデスクトップ環境の使い勝手がここ数年目覚しく進化したのは,XPという圧倒的な存在,明確な目標があったからにほかならない。

 だが,さすがに2009年の今,8年近く前に発売されたXPは,もはや目標どころか対等な競争相手としても物足りなくなっている。

 「いや,まだLinuxなんかよりWindows XPの方が断然上だろう」と考えている方は,試しにLive CD版のUbuntuあたりをダウンロードして,ぜひ使ってみていただきたい。ゲームなど一部のアプリケーションを除けば,インターネットにアクセスしたり,メールをやり取りしたり,動画を見たりするような日常の多くの作業は,UbuntuでもXPとほとんど同じ感覚で不自由なくこなせるようになっている。

強敵7の登場がLinuxの進化をさらに加速する

 技術開発全般に言えることだが,やはりライバルがあり,目標となる到達点があってこそ開発の意欲は増すというものである。乗り越えるべき相手が遠いほど,必死に追いつこうと開発ペースも上がってゆく。今のLinux,これからのLinuxにとって,Windows 7はまさに格好のターゲットとなるだろう。

 Vistaは短命かつXPからの乗り換えが結局あまり進まなかったので,この際忘れてしまうことにすると(笑),Windows 7はXPと比べて機能的に格段の進化を遂げている。3Dで半透明のウインドウといった見た目もさることながら,OS内部のアーキテクチャや機能が大幅に変わっている。

 例えば,現代OSの要といえるネットワーク機能は,TCP/IPスタックのレベルから刷新され,ネットワーク探索の仕組みやファイル共有関連など,様々な機能やプロトコルが追加されている。次世代のIPv6関連でも,ほかのOSと比べ抜きん出た最先端の機能が満載である。これらの新機能のいくつかは,明らかにクライアントOSとしての使い勝手を高めるもので,これまでLinuxには似た機能さえ搭載されていなかったものばかりだ。

 一例を挙げよう。Windows 7は,LANでつないだ家電機器とパソコンの間で,手軽に音声や映像を共有できる「DLNA 1.5」規格にOSレベルで標準対応している。DLNAは,家電機器側の対応はどんどん進んでいるのに,これまでOS側の対応状況はお寒い限りだった。Windows 7のDLNA対応は,これからのホーム・ネットワークを考える上で非常に大きな意味を持つ。

 DLNAに関して,サーバー・ソフトはLinuxでもWindowsでも優れもののフリーソフトがいくつか存在するが,クライアント・ソフトでは「これだ」という安定したフリーソフトが1つも存在しない,という問題もあった。Windows 7は,なんとサーバーおよびクライアント・ソフトを標準搭載する。Windows 7がここまでやるのを見せられれば,Linux側が黙っているはずはない。早晩,対応に向けて動き出すだろう。

 このように,Windows 7の登場によって,この先クライアント向けLinuxが多大な影響を受けることは間違いない。まずは何がLinuxデスクトップにも必要な機能で,どこから手を付けるべきなのかを決め,Windows 7に追いつくところから始めなければならない。しかし,Linuxの開発スピードから言って,2~3年もすれば一部の機能はWindows 7を追い越すようなところまで行けるのではないだろうか。

 いずれにせよ,実際にLinuxでどのような動きが起こるのか,これからが楽しみである。