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 一方、個人のコード体系については明確な記述がない。これは、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)を導入する際に、「国民ID」に対する批判が巻き起こったことが背景にあるのではないだろうか。

 ワンストップ・サービスのポータルサイトとなる「国民電子私書箱(仮称)」でも、個人コードの取り扱いは明言していない。電子私書箱はもともと、2007年7月に内閣総理大臣を本部長とするIT戦略本部が策定した「重点計画-2007」で発案されたもの。ここでの電子私書箱は、社会保障に関する情報の入手・閲覧をできるようにすることが目的だった(関連記事)。今回の国民電子私書箱は、用途を社会保障サービス以外に広げるものだ。

 これまでは、米国と同様に、日本でも社会保障サービスで利用する社会保障番号が個人コードになるのではないかという議論もあった。しかし、今夏に始まる社会保障カードの実証実験では、プライバシー侵害のおそれがあるため、統一番号の導入は行わない見通しであり、電子私書箱の個人コードとして利用できそうもない(関連記事)。

 前述の「重点戦略実現に向けた具体的施策例」では、電子自治体の項目に「徹底した利用者視点から、公的個人認証サービスの利便性の向上、利用サービスの拡大等を図り、認証基盤として抜本的な普及拡大を図る」という記述があり、個人認証には既存の公的個人認証サービスを活用するものと見られる。このサービスは、住基カードの取得(住基ネットでのコードの割り当て)が前提である。このため、個人コードは、住基ネットの情報が基盤となるものと予想される。

 当初は、一部の自治体が住基ネットへの接続を拒否したり、希望者のみの登録にとどめていたりしたため、個人コードとはなり得なかった。しかし、2008年3月に最高裁が住基ネットを管理・利用する行為に違法性はない(憲法13条に違反しない)との判決を下し、東京都国立市と福島県矢祭町の2自治体以外は全面参加するに至っている。「官」が管理する情報に限定して考えれば、個人コードの基盤としては住基ネットの活用が現実解となろう。しかし、住基ネットに関しては、最高裁の判決以降も様々な論点があり、個人コード体系の標準化が円滑に進むか否かは不透明である。

 企業と個人の双方でコード体系をどのように整備していくのか。プライバシーとセキュリティの観点から慎重な議論が必要になるだろうが、利用者の利便性を高めるためには企業と個人のコード体系の標準化は不可欠。ここを避けて、ほかの開発・実装を進めていくと、“ハコモノ”だけが残って利用が進まないという状況になりかねない。