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 筆者は,日経BP社主催のエンタープライズICT総合展示会「ITpro EXPO」で,第1回(2008年1月30日~2月1日),第2回(2008年10月15~17日)の2回にわたり主催者企画「ICTの実験場」を担当してきた。ICTの実験場とは,「ICT(information and communication technology)を活用した展示会」を目標に,実証実験を行うという試みだ。

 ここで筆者は,展示会場内にエリアを限定して,独自製作のワンセグ番組を配信する実験に取り組んだ。いわゆる「エリア・ワンセグ」や「エリア限定ワンセグ」と呼ばれるものだ。

 今回は,実際に当事者としてエリア限定ワンセグの実証実験に関与した立場で感じた「エリア限定ワンセグ」の問題点について,実験の経緯を確認しつつ書いていきたいと思う(第1回ITpro EXPOで実施した実験の詳細は「ワンセグ・トライアルの裏側全部見せます」を参照)。

実験試験局の免許取得のほかに「ガイドライン」がある

 エリア・ワンセグはまだ正式サービスとして提供できない。法律的に見て,あくまでも「実験」という位置付けだ。総務省から実験試験局の免許を受けて実施する形をとる。

 実験試験局の免許を受けるためには,実験の趣旨をまとめた実験計画書のほか,電波の周波数や出力,アンテナの位置などを詳細に記した書類を総務省に提出しなければならない。

 実際に実験を実施するためには,こうした免許取得時に明記した事項以外にも守るべきものがある。デジタル放送の普及促進を図る社団法人「デジタル放送推進協会」(Dpa)が2008年4月に公開した「『ワンセグメント・ローカルサービス』の送出運用に関する暫定ガイドライン」がそれだ。

 このガイドラインの目的は,エリア限定ワンセグがもたらす可能性のある受信の不具合や既存テレビ放送の受信妨害を避ける点にある。ワンセグでは,番組といっしょに多種多様なパラメータを配信している。こうしたパラメータの値をいい加減に設定して配信すると,受信機にトラブルが発生する可能性がある。

 そこでガイドラインでは,問題となりそうなパラメータを抽出し,エリア限定ワンセグで利用するパラメータの値を決めている。ガイドラインで細かく規定していない部分については,電波産業界(ARIB)の技術資料「地上デジタルテレビジョン放送運用規定」(ARIB TR-B14)および標準規格「地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式」(ARIB STD-B13)に準拠する旨が記されている。

 ガイドラインに法的な強制力はない。しかしDpaは,エリア限定ワンセグの実験当事者に対してガイドラインに沿った運用を“強く推奨”している。

 実は第2回ITpro EXPOのときに,ある理由からこのガイドラインの一部を守らずに実験を実施した。その理由こそ,筆者が「エリア限定ワンセグの限界」を感じるきっかけとなったポイントだ。

ワンセグを使ってイベントを魅力的なものにするには?

 Dpaが最初の暫定ガイドラインを公開したのは2008年4月。第1回ITpro EXPOの終了後,筆者などワンセグ・トライアルに携わったメンバーが第1回の反省を踏まえて,10月開催の第2回目の実験内容を検討していたころである。

 第1回のワンセグ・トライアルで流した映像コンテンツは3種類。(1)主催者企画ブースの紹介ビデオ,(2)メイン・シアターで行われる編集記者による講演,(3)当日編集したEXPO会場内のニュース――である。これらのコンテンツは,かなりの負荷をかけて作成したにもかかわらず,来場者にとって非常に魅力のあるものといえるかどうかは疑問が残った。

 より魅了ある映像コンテンツとはどんなものだろうか。それは,展示会として最も集客効果の高いものになるだろう。そう考えると,答えは自ずと出てくる。「基調講演」だ。

 ITpro EXPOの多くの講演は事前登録制を取っている。著名人を招いての基調講演は,事前登録の受付から数日で満席になることも多い。そこで,定員オーバーになってしまって会場に入れない来場者のために,ワンセグで講演を中継したらどうだろうか? さらにその日や時間をずらして再配信すれば,時間が調整できずに基調講演を聞けなかった来場者にも満足してもらえるのではないか?

 そう考えた結果,第2回目の実験では,初日と2日目の午前中に行われる基調講演をワンセグで生中継するとともに,録画したものを翌日の午後に再配信することに決めた。そうした情報がはっきりと来場者に伝わるように,会期中にワンセグで流すコンテンツの番組表を作成した。

 しかし,これを実現するにはクリアしなければならない課題があった。それは,「ワンセグ番組を来場者が録画して持ち帰ってしまうのを避ける」ということだ。