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不況下で問題が顕在化

 一昨年までのように景気が良ければ、中年症候群は大きな問題にならなかっただろう。だが冒頭にも述べたように、IT業界は厳しい不況のなかにある。

 1990年代のバブル崩壊による業界の減収傾向は3年にわたって続いたという。それから以前の水準に戻るまでに、さらに3年を要した。2000年前後のITバブル崩壊の際には、1年半にわたって売り上げが下がり、ほぼ同じ期間をかけて元の状態に回復した。

 まだ不況に突入して1年もたっていないが、今回の不況の谷は深い。連結売上高で数百億円規模の上場しているSIerを見ても、2009年度については売上高で2割から3割減の通期予想を立てている企業が珍しくない。

 こういった企業は外注費の削減をそろって打ち出している。大手からの発注に依存する中堅・中小のSIerの業績がさらに厳しいことは言うまでもないだろう。企業としての生き残りがかかった時代が到来したと考えるのは、それほど不自然ではあるまい。

 もう一つ、深刻な話がある。上場企業全体で見たSIerの売上高営業利益率は、過去何年にもわたって下降傾向が続いている。今の状況が続けば、あと20年以内に上場企業全体としては営業利益率がゼロにまで下落する可能性がある。果たして業界として成立し続けるかどうかも不透明なのである。

個々の企業には可能性がある

 だからといって、ITサービス業界がなくなってよいはずがない。ITは企業や社会を確実に変革している。企業システムから組み込みソフトに至るまで、その範囲は想像もできないほど広い。ITを支える産業、企業なしに社会は成立しないのだ。

 不況を乗り切るため、日々のビジネスにきゅうきゅうとしている企業が多いに違いない。しかし、こんな時期だからこそ、自社が中年症候群に陥っていないかどうか自問してほしい。中年症候群の可能性があるなら、脱出に全力を注ぐべきである。

 もちろん脱出は簡単ではないだろう。言い古された言葉だが、真の意味で自らを変革しない限り、利益を上げることにすら苦労する状況から抜け出すのは無理だ。

 現時点でこれといった答えを筆者も持っているわけではないが、既存の人材に頼り、受託開発で事業を維持するのは限界である。事業構造を抜本的に変えなければ、業界全体の地盤沈下は止まらないだろう。

 では、SIerはどのような方向に進めばよいのか。個人的には、クラウドを一つの部品のように扱ってシステムを構築する力、広義のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業、場所や企業の枠を超えた仮想的なチームによるプロジェクトなどが、変革のカギになるのではないかと考えている。

 これらを実践したからといって、必ず成功するとは限らない。それでも従来型の受託開発とはある時期に決別する必要があるのではないだろうか。

 40年前、SIerは格好良い会社だったに違いない。中年症候群を感じる企業は当時を思い出してほしい。