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新型インフル感染者が出た直後の週は、1万2000人の予約が飛んだ

 ところが、新型インフルエンザの場合は、事情が違った。神戸は5割、大阪は3割5分落ち込み、チェーン全体で3割の売り上げ減になったという。5月の第1週、約1万2000人の予約が吹っ飛んだからだ。1週目の売り上げは前年の7割、2週目は8割、6月には9割まで回復したという。

 外食産業以上に影響を受けたのは、ホテルや旅館だろう。多くの企業は、新型インフルエンザの感染者が見つかった関西方面への出張を事実上禁止したからだ。いくらリーズナブルなホテルでも、出張や旅行が大幅に減ったら、対処のしようがない。「トップインタビュー 大淘汰時代を勝ち抜く」で取材した、客室稼働率約90%を誇るスーパーホテルの山本梁介会長も、「一番影響を受けたのはホテル産業。外食や物販よりも厳しい状況に陥った」と話していた。

 山本会長によれば、5月の関西地区の稼働率はキャンセルが相次ぎ、通常時の50%程度まで落ち込んだという。スーパーホテルに限らずホテル産業全体が打撃を受けた。外食や物販は、周辺地域からも客が来店するが、ホテルは周辺地域から来店することはまずない。だから、企業が一斉に出張を取りやめたりすると、大きな影響を受けてしまう。

 いずれにしても、さまざまな事件や事故などが起きるたびに企業は的確で迅速な対応を迫られる。対応そのものが誤っていたり、遅れてしまったりすると、簡単に破たんしてしまう。日本企業はこの1年で痛いほど味わった。

需給ギャップが埋まらない

 伊藤忠商事の小林栄三取締役社長から聞いた自動車の需給ギャップ問題は、かなり深刻だ。「自動車業界全体(世界)の生産能力は約9500万台だが、需要はピーク時でも7500万台程度。2009年の需要は低迷しており5500万台程度になりそう」。需給ギャップが4000万台もあるというのは、世界にある工場をかなり閉鎖しなければならないという意味だ。生産と需要の大きなギャップを調整していくうえで、自動車メーカーの淘汰再編はかなり進むとみられる。自動車産業は裾野が広いだけに、業態転換を迫られる中小企業はおびただしい数に上りそうだ。

 今春、経済産業省主催の集まりでトヨタ自動車前社長の渡辺捷昭代表取締役副会長に話をうかがう機会があった。そのときに渡辺副会長は「米国市場は落ちるだけ落ちるが、必ず需要は戻ってくる。しかし、求められるものが以前とは様変わりするだろう。環境、エネルギー、安心・安全を押さえたクルマでなければ売れない」とはっきり話していた。環境対応のクルマを開発・製造できない自動車メーカーは淘汰されるのは間違いない。

 自動車産業に限らず、世界の消費者が求める商品やサービスを提供できない企業は、生き残っていけない。今こそコスト削減を進めながら、同時に成長戦略を打ち出して新しい事業を生み出していく必要がある。そのためにも、改めて自社の強みを再認識し、その強みを最大限に生かすように知恵を絞らなければならない。「そんなこと、言われなくても分かっている」という読者の方が大半だと思うが、新しい事業を生み出すのは至難の業だ。

 そのときにヒントになるのが、いま急成長している企業の取り組みだ。その1社は、「トップインタビュー 大淘汰時代を勝ち抜く」に登場したガリバーインターナショナルだ。ガリバーは中古車の小売りで2008年3月から2009年6月まで16カ月連続で前年同月実績を上回っている。もともと全国どこでも同一の「適正価格」で中古車を買い取り、オークションで売りさばく事業で急成長したが、最近は小売りに力を入れている。ガリバーの小売りは従来の中古車販売とは全く異なる。広い駐車場に何台も中古車を展示して売るスタイルではなく、画像販売システム「ドルフィネット」を通して中古車を販売している。

 「画像だけ見て中古車を買うのは不安だ」という人は多いかもしれないが、ITの進歩でかなり見やすく、使いやすくなってきた。この点がクリアーされると、消費者にとってはメリットがたくさんある。駐車場や余計な在庫を持たないので小売価格を卸売価格並みにできる。さらに、新車でも実施していない「10年保証」や「事故車が皆無」「納車後1カ月以内の返品は自由」といったガリバーの対応がさらにハードルを低くしているようだ。消費者にとって最も買いやすい売り方ができれば、商品はどんどん売れていく。