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 クラウドを使えば予算に限りのあるスタートアップ企業や個人の開発者でも世界レベルのWebサービスを展開できる───。

 最近,このようなことがよく言われます。日経ソフトウエア9月号の記事のために,筆者はこの1カ月間ほど,米グーグルの「Google App Engine」Java版と米マイクロソフトの「Windows Azure」を使ってみて,なるほど確かにそうかもしれないと思いました。両者ともPaaS型(Platform as a Service)と呼ばれるクラウド・サービスで,圧倒的な低料金を実現しています(料金の詳細はこちらこちらの記事をご覧ください)。

 当たり前ですが,クラウド・サービスを使えばハードウエアやネットワーク回線を用意する必要がありません。PaaS型ならOSの設定なども不要です。クラスタリングによる負荷分散と冗長化構成といったシステム構築も必要ありません。すべてクラウド・サービス側が半自動的に行ってくれます。Windows Azureであれば「ファブリック」という仮想的なハードウエアのインスタンス数を設定ファイルに記述するだけでクラスタリングが可能になっています。

 このようにクラウドはソフトウエア開発者にとっては夢のような環境です。しかし同時に,これもよく言われることですが“破壊的な脅威”でもあると感じました。

 まず,クラウドが本格的に普及し始めたらサーバーやネットワークの設定・保守,クラスタ構築といったビジネスが消滅しそうです。特にクラスタ構築は技術的にも一大テーマであり,システム・インテグレータにとっては重要なビジネスです。これが無くなると影響は小さくないでしょう。もちろん,「クラウドのサポート・ビジネス」が新たに生まれるでしょうが,利益率は既存のビジネスに比べてずっと低そうです。

 また,誰でも少ない投資で豊富なサーバー・インフラを入手できるクラウドは,とりわけWeb系のサービスの競争を一層加速させそうです。良いアイデアとプログラミングの才能(と少し多めのお小遣い)さえあれば,いきなり全国レベル,世界レベルのサービスを開発・展開できる可能性があるからです。さらにIPA(情報処理推進機構)の未踏ソフトウェア創造事業などを見れば分かるように,ソフトウエア開発やプログラミングは若くして成功できる分野です。どんどん新しい才能が参入してきます。御社の明日のライバル・サービスは隣の学校の高校生が作っているかもしれません。ただ,受託型のソフトウエア開発はそこまで激しい状況にはならないと思いますが。

 クラウド・サービスの発展に伴ってソフトウエア開発やITサービスの競争が超激化し,儲かるのは一握りのプレーヤと,一部のクラウドを提供している事業者だけ。悲観的ですが,このような将来像を予想してしまいます。