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Bフレッツ(FTTH)
本社のメイン回線に据える企業も

 WANのアクセス回線にNTT東西地域会社の「Bフレッツ」をはじめとするFTTHを利用する企業が急速に増えている。その理由は,これまで企業のアクセス回線の主役を担ってきたイーサネット専用線などの専用線サービスに比べ格段に安く,高速だから。FTTHの存在感は日増しに大きくなるばかりだ。

 しかもFTTHの活用シーンは,もはや中小拠点のアクセス回線やバックアップ用途だけではない。以前は専用線を使うことがほぼ常識とされてきた主要拠点や基幹系システムのアクセス回線にさえも,Bフレッツなどを使用することを厭わない企業が現れてきた。

 前述のように,エントリーVPNをメインの閉域ネットワークとしているオリンパス。同社はメール・サーバーや基幹系システムを置く東京都下のデータ・センターから,5本のBフレッツを使ってエントリーVPNと接続している。また住宅販売のミサワホームも,FTTHをメインのアクセス回線に使う1社。本社のアクセス回線も,BフレッツとUSENの「BROAD-GATE02」の2種類のFTTHサービスが支えている(図2)。

図2●ミサワホームは主要拠点の主力アクセス回線としてFTTHを採用
図2●ミサワホームは主要拠点の主力アクセス回線としてFTTHを採用
重要な基幹部分は,回線とプロバイダが異なる2本のFTTHを引いて耐障害性を高めた。
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「障害はそれほど発生しない」

 だが主要拠点や基幹系システムにベストエフォート型のFTTHを採用することは,トラブルを起こしやすくする原因にならないのか。

 実際のところユーザー企業の規模やネットワーク構成により,障害が起こる割合はまちまちだ。ミサワホームはFTTHで障害が起こる割合を,「BROAD-GATE02は1年半といった長いスパンで1回起こる程度の感覚。Bフレッツは採用拠点が多いこともあり,月に1~2カ所で何らかのトラブルが起こっているように思う」とする。

 一方のオリンパスは,Bフレッツの障害は基本的に起こっていないと証言する。

 しかしFTTHの場合は工事によってサービスを停止することがある。そしてその頻度や工事の時間を調整できるかどうかの点で,FTTHとイーサネット専用線などには大きな差がある。

 オリンパスは,「気にしているのは,データが集まるデータ・センターと,生産管理システムが動く工場でサービス停止があるかどうか」と話す。同社では再送の仕組みがないファイル転送処理を夜間に実行することがあり,その最中に回線が切れると作業の大幅な遅れにつながるからだ。ところが「Bフレッツはおおむね1カ月に1~2回,全国の拠点のいずれかのエリアで工事による停止がある。しかも工事によるサービス停止の連絡が一方的に提示される。イーサネット専用線やNTT東西のメガデータネッツなら,全拠点を合わせても工事は年に1~2回。工事時間の調整も可能だ」(同社)。

 基幹ネットワークのアクセス回線にイーサネット専用線,情報系ネットワークではBフレッツを使う幸楽苑も,両サービスの一時停止に対する考え方の違いを指摘する。「Bフレッツは工事によるサービス停止時に通知が来るだけ。これに対してイーサネット専用線は,工事の時間を相談できる。工事の頻度もイーサネット専用線の方が少ない」(同社)。

回線の2重化やバックアップを考慮

 これらの意見を見ると,現状ではFTTHを工夫なしで主要拠点のメインのアクセス回線として使うのは難しいことが分かる。そこでFTTHを主要拠点や基幹系で使うユーザーはいずれも,メインのFTTHがダウンした場合を想定し,回線の2重化やバックアップ回線の採用で対処している。

 ミサワホームは,基幹系システムのアクセス回線をFTTHの組み合わせで2重化。具体的にはBROAD-GATE02とBフレッツを併用する。オリンパスの場合は,バックアップ用の広域イーサネットへのアクセス回線に,KDDIのイーサネット専用線とメガデータネッツを使う。

 またオリンパスは,今後は異なるFTTHを組み合わせてアクセス回線に使いたいという希望を持つ。しかしFTTHはNTT東西からダーク・ファイバを借りて提供するケースがあるため,BCPの観点から条件不足と考えており,そのカバーを電力系通信事業者に期待しているようだ。オリンパスは,「特にKDDIと東京電力には提供エリア拡大に向けがんばってもらいたい」と話す。

 FTTHはコンシューマ向けに端を発するサービスでもあり,サポートはイーサネット専用線などに及ばない。だがその圧倒的な安さと速さは魅力的。ネットワーク構成を工夫してでも,FTTHを全面的に採用していこうという企業は,今後も続々と登場しそうだ。