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 KVMスイッチのKVMとはキーボード(K),ビデオ・ディスプレイ(V),マウス(M)の頭文字から取った造語。一台のコンピュータのキーボード,ビデオ・ディスプレイ,マウスから複数のコンピュータを操作するための切り替え装置のことである。

 2台のパソコンを一組のキーボード,ディスプレイ,マウスで操作するための切り替え装置も小規模なKVMと言える。大規模のKVMはデータセンターなどで数十,数百といったサーバーのメンテナンスに利用される。

 KVMスイッチは,コンピュータとキーボードなどの間のデータの伝送方式によって「アナログ」と「デジタル」に分かれる。両者の違いは伝送可能な距離にある。アナログKVMの利用は同一ビル内などに限定されるのに対し,デジタルKVMではインターネットなどを利用して遠隔地のコンピュータも操作できる。

 アナログKVMでは,キーボードやビデオの信号をアナログ信号のまま伝送する。具体的には,PS/2,RGBなどと呼ばれる信号だ。マウスを動かしたときの反応などは,手元のパソコンを操作するのと変わらない。しかし,ケーブルが長くなると,信号が劣化するため,文字がにじんで読みにくくなる。このため,実用的に利用できる距離には制限がある。

 一方のデジタルは信号をデジタル化してIPネットワークで伝送する。インターネットや通信事業者の提供するネットワーク・サービスを利用すれば,遠隔地にあるサーバーの操作も可能である。ただし信号のデジタル化やネットワーク伝送による処理の遅延のためレスポンスが悪くなる。

サーバーのオプションとして提供されてきた

 このように近距離ならアナログ,遠距離ならデジタルというのがKVM選択の大原則である。しかし,両者の違いは,技術的な面だけでなく今後の市場動向を読み解くうえでもキーワードとなる。

 米国の調査会社VDCによれば,2008年のKVMスイッチの出荷額は9億5850万米ドルである(国内代理店のグローバルインフォメーション)。国内市場については,はっきりとした調査資料はないものの,業界関係者たちの話を総合すると,個人向けと企業向けを併せて100億円~150億円と推定され,国際市場の1割程度となる。伸び率の面でも「欧米で年率30%増,アジアでも同35%増と世界各地で好調。中国では2倍の成長率」(グローバル展開しているKVMメーカー)に比べ,国内では約10%弱とみられる。

 国際市場に比べ,国内市場が見劣りする理由は「アナログ中心」と「デジタル中心」の違いあると推測される。

 これまで,日本国内ではKVMスイッチはサーバー・メーカーやSIerのオプションとして提供されることが多かった。主なユーザーはデータセンターやサーバールームで作業するメンテナンス担当のエンジニア。データセンターやサーバールーム内で利用するため,方式はアナログであった。アナログKVMは,データセンターのエンジニアたちが作業を便利に行うためのツールであったと言える。

 一方で,国際市場で中心となっているのはデジタルKVMである。上記の成長市場を支えているのもデジタルKVMだ。デジタルKVMの特徴は,伝送距離が実質無制限なこと。この特徴を生かせば,現地に出向かずとも遠隔操作でトラブルに対応できる。海外工場のサーバー・トラブルを日本国内の本社にいるシステム担当者がデジタルKVMを利用して解決する,といった事も可能だ。事実,国際市場では出張経費削減のためのツールとしてとらえられている。ユーザー層も,ITシステムのユーザー企業全般に広がっている。

 だが昨年辺りから,国際市場に遅れること数年でKVMのデジタル化が国内でも進み始めたようだ。「Interopなどの大型展示会に出展すると,これまでKVMを利用していなかった企業の人が情報収集に訪れるようになった」(KVMメーカーの担当者)との声もある。アナログKVMが中心だったメーカーも,2008年から急速にデジタルKVMのラインアップを拡充させ,ユーザーのデジタル化へのニーズに答えようとしている。