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 「公的年金を記録・管理する情報システム」の不備の最大の要因は,「情報システム構築・運用の責任者や責任体制が明確でないこと」にある――(図1)。

 年金情報システムを含む年金問題が争点の1つとなっている参議院選挙直前の2007年7月12日~19日に,ITpro Researchモニター*1)に対して,年金情報システムに関する調査を実施した。システムの不備の要因や問題領域,投票行動などに関して尋ね,2791件の回答を得た。

 不備の要因の選択肢8件の中で上位に挙がったのは,冒頭の「不明確な責任体制」(78%)のほか,「データ入力時の正確性を検証する仕組み」(63%),「システムの不備があった場合にも長期間発覚しにくいこと」(56%),「エンドユーザー(社会保険庁の職員など)の労務管理の困難さ」(48%)――である。

図1●年金情報システムの特殊性と不備の要因
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 これに対して,年金情報システムを「全国に拠点をもつ企業の基幹業務システム」と比べた場合の特殊性について尋ねたところ,「官公庁の予算制度では,複数年にまたがったIT投資を計画しにくいこと」(45%)がやや高いほか,目立つ項目はなかった。年金情報システムの不備は,企業と比べた特殊性に起因するとは考えられていないようだ。

 これらの調査結果を,今月の参議院選挙の比例代表選挙で投票を予定する政党別に見ると,システムの不備の要因に関して,自民党と民主党とで傾向の違いが見られた(図2)。民主党投票予定者は,大半の項目で回答率が高く,特に「不明確な責任体制」と「適切なベンダーを柔軟に選定しにくい官公庁の発注制度」で高く,自民党投票予定者との差は7~8%に達する。

 逆に,自民党投票予定者が民主党を上回った項目は,8項目のうち,「複数年にまたがったIT投資を計画しにくい官公庁の予算制度」の1つだけであった。

図2●年金情報システムの不備の要因(政党別)
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民主党投票予定者は責任,品質,発注,調達に敏感

 年金情報システムの構築・運用プロジェクトにおいて,問題があった領域については,リスク管理,品質管理,人的資源の管理の3項目が,7割前後の回答率で高かった(図3)。政党別に見ると,民主党投票予定者は自民党と比べ,「品質管理」と「調達管理」を問題視する傾向が強い。

図3●年金情報システムの構築・運用プロジェクトにおいて問題のあった領域
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 なお,ここで選択肢としたのは,「PMBOK(Project Management Body of Knowledge)」(米プロジェクト・マネジメント協会が提唱する,プロジェクト・マネジメントに関する知識体系)の8つの領域である。

 「不備の要因」と「問題領域」を総じて見ると,民主党投票予定者は,責任,品質,発注,調達といった言葉に,より敏感に反応すると言えそうだ。

 今回の調査の回答者の年齢分布は,20歳代が6%,30歳代が33%,40歳代が40%,50歳代以上が22%である。また今回の回答者は,自民党が大勝した2005年9月の総選挙(衆議院選挙)においても,民主党への投票者が多かったことから,国民全体と比べ民主党よりの回答者で構成されていると考えられる(図4)。

図4●国政選挙での投票予定・行動
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(村中 敏彦=日経BPコンサルティングチーフ・アナリスト,BtoBコンサルティング・リサーチ 担当)