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総務省
総合通信基盤局事業政策課

 携帯電話料金は,定額制,無料通話分,長期継続割引,家族割引など多種多様な料金体系や割引制度が存在する。また音声だけでなく,メールやインターネット接続,音楽ダウンロードなども利用するため,料金水準の推移を体系的に把握するのは容易ではない。利用者からは「料金が複雑で分かりにくい」との不満が強い。MNP制度導入による料金水準の変化を評価するには,できる限り分かりやすい分析方法が必要となる。

 そこで,携帯電話利用に関する様々な条件を入力するとその条件下での最安の料金を事業者ごとに提示する料金関数を,東京大学大橋研究室の協力を得て作成した。この料金関数によって,様々な利用パターン別の料金プロファイルを推計することが可能となる。

 この推計結果を利用して,MNP導入の議論が始まる前の2003年10月とMNP制度導入後の2007年4月の時点について,その料金水準の比較を試みた。その結果が図5の(1)~(3)である。いずれの利用パターンについても,2007年4月の料金の方が低くなっており,特に通話やパケットの利用が多いほど,継続利用期間が長いほど,料金低下のメリットが大きくなっている。

図5●携帯電話の料金水準の推移
図5●携帯電話の料金水準の推移
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 また,通話・パケットの利用量の多寡に応じた利用者タイプ別の料金の時系列的な変化を示すことも有益である。料金関数を用いて,ヘビー・ユーザーからライト・ユーザーまで4つのタイプ別の料金の時系列変化を示したのが図5の(4)である。通話やパケットの利用が長期にわたって一定と仮定した場合,すべての利用者タイプについて,MNP制度導入が事実上合意された2004年春には既に料金が低下し,MNP導入時の2006年10月以降にもさらなる料金低下が実現している。このような分析結果から,MNP利用者であるか否かにかかわらず,携帯電話利用者はMNP制度導入による料金低下のメリットを確実に享受していると評価できる。

MNP導入に伴いサービスの多様化も進展

 端末の機種数にもMNP制度が関連している。各社とも新機種端末の投入数は増加傾向にあるが,MNP制度導入時の2006年度には特に大きく増加していることが分かる(図6)。また,端末の機種数増に加え,コンテンツやアプリケーション,「おサイフケータイ」といった付加サービスなど,関連サービスの多様性は2004~2006年度において著しく上昇している。MNP制度導入はこのようなサービス拡充の契機になったと考えられ,携帯電話利用者は,携帯端末を始めとしたサービス多様化のメリットを大きく享受していると言える。

図6●携帯電話端末の新機種投入数の推移
図6●携帯電話端末の新機種投入数の推移

 MNP制度導入は,料金低下やサービス多様化を通じ,MNP制度の利用の有無にかかわらず,すべての携帯電話利用者に利益をもたらしていると考えられる。

利用者全体で約1600億円の利益

 携帯電話利用者の利益を定量的に評価するために,東京大学大橋研究室の協力を得て,MNP制度導入によるスイッチングコストの変化や消費者が受ける便益などについて,Webによる調査に基づく計量経済分析を補足的に行った。詳細は割愛するが,MNP制度導入前のスイッチングコストは月額平均約1819円と推計された。月額1819円分安くなるのであれば,携帯電話事業者を変更してもよいと解釈できる。

 MNP制度導入後は,スイッチングコストが月額平均約906円減少したと推計された。つまり,MNP制度導入でスイッチングコストがほぼ半減し,消費者が携帯電話事業者の変更をより考えやすい環境が生まれたと言える。これに伴う消費者の便益を定量的に評価すると,利用者当たり平均年額約1611円,携帯電話利用者全体では約1600億円と試算される結果となった。

MNPは競争促進と利用者利便向上に寄与

 これまで,市場シェア・集中度,料金水準,サービス多様性,消費者利益について,MNP制度導入に伴う変化を見てきた。MNP制度導入を機に,携帯電話市場の競争状況に明確な変化が生じ,これまでとは異質な競争環境に移行したとともに,料金低下やサービス多様化を通じ,携帯電話利用者全体の利益が向上したことが認められる。従って,本分析結果は,MNP制度が携帯電話事業者間の競争促進と利用者の利便性向上の観点から,一定の成果があったことを実証的に確認するものである。

 MNP制度の導入は,これまで携帯電話業界で主として展開されてきた新規顧客の獲得競争に加え,事業者ごとに囲い込まれた既存顧客をめぐる競争促進にも道を開いたものである。しかし,携帯電話事業者間で単に既存のパイを奪い合うのではなく,MNP制度導入を機に登場した低廉な料金メニューなどにより,これまで携帯電話を持たなかった利用者の獲得や二台目需要の開拓が進み,携帯電話市場が活性化した面もある。

 MNP制度は一過性のものでなく,より一層定着していくものである。また,携帯電話サービスに関しては,総務省の「モバイルビジネス研究会」において,販売奨励金SIMロックの見直しなどについても議論されている。これらの議論も競争促進と利用者利益の向上を目指すものであり,更なる競争環境整備を通じて,低廉な料金や魅力的なサービスが次々に提供され,利用者全体の利益に確実につながることが期待される。