今回は中堅・中小企業におけるサーバーの導入目的,すなわちITの導入目的を見ていく。サーバーの導入予定については「前向き」が6割弱と,前年比で2ポイント上昇している。導入目的は,現行システムの老朽化対策や旧OSのアップグレードがそれぞれ3割と目立つ。これに基幹系・情報系システムの統合,セキュリティの強化が続いている。
その一方で,営業・販売,経営の意思決定に役立つシステム構築といったITの戦略活用に向かう様子は,今回も見られなかった。「守り」の投資と特徴付けられる日本企業のIT投資であるが,とりわけ中堅・中小企業ではその姿勢が顕著である。
6割弱が導入を具体的に検討中
サーバー導入予定については,「具体的に導入を検討/計画している」が32.0%,「具体的ではないが検討/考慮している」が25.5%と,導入に前向きな企業の割合が6割弱に達している(図1)。逆に,「導入予定はない」とする回答は39.2%だった。2006年と比較すると,具体的な導入意向が6.5ポイント高まっており,全体的には回復基調になっている。
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図1●サーバーの導入予定(Nは有効回答数) |
サーバー導入を前向きに検討している企業の導入予定時期は,「半年以内」が37.5%,「1年以内」が35.3%。かなり具体的に導入を検討していることが分かる。
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図2●サーバーの導入予定時期(Nは有効回答数) |
ただし,企業の年商規模別にサーバーの導入予定を見ると,大きな格差がある。サーバーの導入を「具体的に検討/計画している」もしくは「具体的ではないが,検討考慮している」は,年商10億円未満の企業で45.9%,10~100億円未満の企業で52.8%。年商100億円以上の企業ではこれが67.2%となり,「年商規模が大きな会社であるほど投資意向も高い」という結果が出ている。
また,回答企業全体におけるサーバー導入を予定している企業比率は57.5%であり,年商100億円以上の企業における67.2%という値は,全体平均より9.7ポイント高い。その一方で,年商10億円未満の企業における導入予定企業45.9%という値は,全体平均より11.6ポイントも低い。この理由としては,中堅・中小企業の中でも企業規模によってITリテラシに格差があること,さらに景気の好不況がまだら模様となっていることが考えられる。
戦略的なIT活用を目的とする導入はまだ少数派
サーバー導入を予定している企業の導入目的は,「システムの入れ替え(現システムは問題が多い)」が31.4%と最も多く,「WindowsNT4.0,Windows2000から最新のOSへのアップグレード」(28.3%),「基幹業務の統合(ERP)・データ一元化」(23.7%),「グループウエアなどでの社内コミュニケーション強化」(23.2%)が続く。なお,今回調査から追加した「内部統制などの企業コンプライアンス対応」は8.9%となった。
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図3●サーバー導入を予定している企業の目的(Nは有効回答数) [画像のクリックで拡大表示] |
2006年の調査結果と比較すると,最新OSへのアップグレードが6.4ポイント増えており,老朽化したシステムの入れ替えと合わせて約6割になる。基幹業務の統合など,基幹系・社内情報系の整備目的がそれに次ぐ。ただし,「基幹業務の統合(ERP)・データ一元化」は前年から6.8ポイント減った。
「直接販売・営業に役立つ」「経営の意思決定に役立つ」「CRM活用」などの戦略的なIT活用目的は,1割に満たない状況であり,前年と比較してもほとんどがポイントを下げている。サーバーの導入意欲自体は好転してきているが,「次のステージ」である経営戦略を支援するためのIT活用にはもう一歩というところだ。
次回,最終回は中堅・中小企業の今後のIT化に関して提言を述べる。
なお,調査プロフィールと今後の連載予定はこちらを参照していただきたい。
■伊嶋 謙二 (いしま けんじ) 【略歴】 ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て,98年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。07年には中堅・中小企業のIT部門向けQ&Aサイト「シス蔵」をテクネット社と立ち上げた。 |