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 前回のERP調査では上位ベンダーのシェアは横並び状態だった。だが,今回の財務会計パッケージでは,OBCの「勘定奉行」の独走状態となりつつある。

 基幹業務システムのメイン業務といえる財務会計は,企業活動で必須のシステムである。オフコン時代から単体業務としては最も重要視されるシステムであった。現在も中堅・中小企業の9割以上に導入されているシステムである(2007年に公開した「中堅・中小企業の業務アプリ利用実態」参照)。中堅企業以上がERP(統合基幹業務システム)へシフトしつつある流れの中でも,規模が小さな企業は,引き続き単体の財務会計システムを導入している。そのほとんどがパッケージ製品である。

保守的な横並び主義が勘定奉行に有利に働く

 財務会計はパッケージ率が92.1%,オーダーメイドが7.9%で,パッケージ化が大きく進んでいる(図1)。財務会計ではレガシーな“手組み”のシステムから,パッケージの導入がいち早く進んできた経緯がある。

図1●財務会計パッケージ導入率(左)と製品シェア(Nは有効回答数)
図1●財務会計パッケージ導入率(左)と製品シェア(Nは有効回答数)

 稼働している財務会計パッケージのシェアは,OBCの「勘定奉行」が33.3%のトップで,2位以下を大きく引き離している。2位が弥生の「弥生会計」で12.7%,3位がPCAの「PCA会計」で11.3%,4位がミロク情報サービスの「財務大将」の7.6%である。

図2●財務会計パッケージの利用予定シェア(Nは有効回答数)
図2●財務会計パッケージの利用予定シェア(Nは有効回答数)
 一方,今後の利用予定シェアのトップは,同じくOBCの「勘定奉行」で33.8%(図2)。2位が弥生の「弥生会計」(11.1%),3位がミロク情報サービスの「財務大将」(10.6%),4位がPCAの「PCA会計」で10.6%,5位が大塚商会の「SMILEα財務管理」(9.1%)である。稼働シェア,利用予定シェアでも「勘定奉行」が2番手以下を大きく引き離している。「勘定奉行」には知名度と販売チャネルの豊富さなどのアドバンテージがある。中堅・中小企業には,実績の多い製品を選択する保守的な傾向がある。こうした横並び主義による指名買いが多いのも,OBCへ有利に作用している。

安価で短納期な汎用製品に高い評価

 財務会計パッケージ導入後の満足度評価については,シェア上位5製品の評価の差は小さい。満足度トップは製品シェア3位のPCAの「PCA会計」が76.3,次いで大塚商会の「SMILEα財務管理」が僅差の74.9(図3)。OBCの「勘定奉行」と弥生の「弥生会計」が74.5,ミロク情報サービスの「財務大将」が73.0で続く。

図3●シェア上位だった財務会計パッケージの満足度。5段階評価(0,20,60,80,100)の加重平均で算出した(Nは有効回答数)
図3●シェア上位だった財務会計パッケージの満足度。5段階評価(0,20,60,80,100)の加重平均で算出した(Nは有効回答数)

 製品シェア上位の顔ぶれを見ると,小規模企業向けが多い。価格も50万円以下で,財務会計単体に機能を限定している。大幅なカスタマイズを前提としておらず,パラメータ変更などの手直しで済ませることも多い。パッケージ自体の仕様を十分に生かした,安くて,短納期なシステムであること,機能的にも「汎用的な要素を取り込んでいる」ため,導入してからの違和感が少ない。財務会計パッケージ全体に対する高い評価から,そう推測できる。

 財務会計は規模の大小を問わず,企業にとって「基幹業務の要のシステム」である。このため,SaaS(Software as aService)を含めたアウトソーシングに対する抵抗感は,いまだに根強い。短期的には財務会計がパッケージからSaaSのような「所有から利用」に変わる可能性は極めて低いと言わざるを得ない。

 次回は人事・給与を取り上げる。

 なお回答企業プロフィールなどの調査概要については,こちらをご覧ください。

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て,98年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。07年には中堅・中小企業のIT部門向けQ&Aサイト「シス蔵」をテクネット社と立ち上げた。