前回に引き続き「第1回クラウドランキング」の調査結果から、クラウド関連サービスの相場を紹介する。今回はシステム部門が最も懸念する信頼性について解説する。題材は前回と同じく「クラウド基盤サービス(PaaSやIaaS)」である。
クラウド基盤サービスにおける「保証サービス稼働率」の相場を図1に示した。驚くべきことに半数に当たる27件のサービスは保証稼働率を公開していない。「個別対応」という歯切れの悪い回答も6件ある。

国内のユーザーはシステムダウンに対して非常に厳しい目を向ける。悪い言い方をすると寛容さに欠けている。これらのユーザー向けにサービスを提供することを考えると、保証サービス稼働時間が「非公開」や「個別対応」のサービスは選びにくい。
日経コンピュータと日経BPコンサルティングが情報化戦略の意思決定者を対象に9月に実施した別の調査では、回答者の22.9%がクラウドサービスに関する改善要望として「稼働率を明らかにしてほしい」を挙げている。「稼働率を高めてほしい」との要望は13.2%だったので、ほぼ倍だ。
保証サービス稼働率を公開しているサービスのなかでは、「99.95%以上」が最も多く11件を占める。99.95%の稼働率というのは単純計算では年間ダウン時間が4.38時間となる。ミッションクリティカルな重要システムには厳しいが、一般的な業務システムなら何とか適用できるだろう。
サービス停止の定義は不透明
ここで気をつけたいのが、どの程度の時間、処理が途絶したら「サービス停止」と見なすかだ。この定義はサービスによって違う。利用企業側の解釈も様々だし、その上で動かすアプリケーションによっても異なる。ほんのわずかな瞬断も許さないアプリケーションもあるし、5分程度の停止なら業務に影響を及ぼさないアプリケーションもある。
そこで「サービス停止と見なす処理途絶時間」(図2)を見ると、ここでも「非公開」が目立つ。回答54件の6割近い31件が「非公開」だった。「特に規定がない」とするサービスも9件あった。

これでは利用企業は何を頼りに非機能要件を定義してよいか、分からない。「非公開」や「特に規定がない」とするサービスの提供ベンダーには早急に改善を望みたい。
「サービス停止と見なす処理途絶時間」を公開しているサービスでは、「5分以上」が最も多く、6件だった。「1分未満」とするサービスも二つあった。
ここまで2回にわたって、クラウド基盤サービスのサービスレベルの相場を見てきた。クラウドらしさに関しては「申し込みから利用開始までの期間」「構成変更にかかる期間」「最低契約期間」の三つを、既存システムからの移行を考慮した信頼性に関しては「保証サービス稼働率」と「サービス停止と見なす処理途絶時間」の二つを紹介した。
「国内のクラウドサービスはまだまだ発展途上」というのが率直な印象だ。米国政府(連邦調達庁)がクラウドサービスに求める要件を表1に示す。サービスをいつからでも利用可能であるとともにいつでも解約できることや、99.5%の稼働率を求めている。国内でも、これらの要求を満たさないクラウドサービスは中長期的に淘汰されるだろう。

米連邦調達庁が求める稼働率を99.95%としていましたが、正しくは99.5%です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2010/11/09 15:40]