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 米Dell創業者兼会長であるMichael Dell氏は香港で,世界最大のパソコン・メーカーである同社を苦しめている最近の問題を「重要視しない」と発言し,平静を保つようメッセージを出した。「ノート・パソコン用バッテリの大規模なリコールや,大幅な減益,ライバルである米Hewlett-Packard(HP)との競争激化,われわれの収益認識慣行に対する米証券取引委員会(SEC)の調査など,当社が被っている“災厄”は,すべて一時的な後退に過ぎない」(Dell氏)

 香港の商工会議所が開催した会合で,Dell氏は「こうした状況下でとれる対応策は多い」と述べた。「人によっては,逃げて姿を隠したり,監督当局の対応を待ったり,『(現在起きていることは)問題ではない』と主張したりするかもしれない。しかし当社は,これまで十分な注意を払ってきた。こうした過剰な反応に惑わされず,顧客にとって適切な対応をとっている。長い目でみれば,顧客から理解が得られるだろう」(Dell氏)

 Dell氏はこの会合の最中,落ち着いていたようにみえる。そして皮肉な表情を浮かべながら,「ほかの人たちは最近の24時間に注目したがるかもしれないが,私は過去24年間をみる方が好みだ」と指摘した。同氏は,大学の学生寮で起業したDellを24年かけて国際的な大企業に育て上げた(実際にはDellの創業は22年前だ)。「われわれがほかの誰よりも多くのコンピュータ・システムを販売している,という現実がある。2四半期後くらいに状況をもう一度みてほしい」(Dell氏)

 確かに,HPによる最近の復活劇は,いかにして巨大な技術系企業が財政的な苦境から立ち直れるかを示す一例である(HPの低迷は,前CEOであるCarly Fiorina氏の誤った舵取りが原因と考えられる)。それにDellは,HPが苦しんだような大規模で広範な困難にとらわれてはいない。したがってDellの現在の落ち込みは,HPに比べ短期間で済み,傷も浅い可能性がある。