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 マンション・ホテルの耐震計算偽造疑惑の問題は...まだ尾を引いています。先ほども、取引銀行の部長とお話しておりましたら「中小マンション・ディベロッパーの経営を直撃するのではないか」とのこと。

 なにしろ、ヒューザーの小嶋進社長とイーホームズ藤田東吾社長の劇的な国会答弁や、ワイドショーによる姉歯秀次建築士や住民への取材攻勢もあって、しばしテレビ電波と巷の話題を独占していたのですから、推して知るべし....です。

 しかし、インターネットでこの事件を検索すれば、もっと恐ろしいことが起きていたことがわかるでしょう。

 例えば、ただ今(12月20日の段階)Googleで「耐震計算偽造」というキーワード検索をしましたら、なんと約34万8000件もヒットするのです。

 見れば、個人ブログによる「勝手にコメント」の洪水です。しかも、検索結果1ページめ、トップ10に表示された記事を眺めますと、1位を含め4件がブログ記事なのです!

 なんと、毎日新聞-msn、asahi.com、Yahooニュースに伍して、目立った情報発信をしていて、ちょっとした驚きです。

 これは、ブログの二つの特性=

 1)誰もが簡単に格安に情報発信できる 
 2)構造上、検索エンジン対策に強い

 による当然と言えば当然の帰結でしょう。

なぜブログを活用して情報発信をしないのだろうか?

 しかし、私が恐ろしいと申し上げたのは、この「いわば当然の検索結果」のことではありません。

 今回の事件で多大なダメージを受けたはずのマンション建築・販売関係の同業各社、それも誠実に耐震計算も設計も施行管理もしていたであろう同業各社が、この「ブログのありがたい恩恵」を目だって行使していなかったことです。

 もし、私が同業の社長だったら....その日のうちにブログをいくつも立ち上げて、情報発信を開始したはずです。

 例えば、書籍にもなった人気ブログ「悪徳不動産屋の独り言~街の不動産屋から見た人間模様と喜怒哀楽」....の印象的なタイトルを見習って、「誰も書かない耐震構造計算の秘密~マンション300棟を建てたプロ業者社長のつぶやき」というネーミングのブログなどいかがでしょう?

 あるいは、もっと生活者の視点に立って「地震で危ないマンションを見分ける極意~下請設計士だからこそわかる悪徳業者の甘いワナ」というブログ名にしたら、人気を集めるかもしれません。

 大げさに見えるかもしれませんが、書く内容は決して特別なものでなくても良いのです。日頃、真面目にコツコツとやっていることを、良く知っているはずの業界の悪習と並べて書くだけで、十分に読み応えのある記事になるはずです。

 もし、建設会社の社長自らが積極的に、こうしたブログで情報発信をしていたらどうなったでしょう?少なくとも、3つの効果的な情報発信が同時にできたはずです。

1)既存のお客様向け安心メッセージ発信

 おそらく殺到するであろう、自社関与物件の住民からの同音異句の問い合わせに、一度に答えられるだけでなく、社長の誠意と真面目な仕事ぶりを改めて伝えられたでしょう。

2)新規のお客様候補向け営業メッセージ発信

 その正直な情報公開、真面目な仕事ぶりと物件に加えて、社長の誠実な人柄を、多くの人が知ることになれば、当然ながら、自分が買うならこの会社...となるでしょう。

3)マスメディア向けプレスリリース発信

 いち早くプレス向けにリスクコミュニケーションができる上、真面目な業者の反対意見を取材したい記者たちの目にとまって、「ありがたい取材記事」につながるかもしれません。

 まさに災い転じて福となす....この千載一遇のチャンスを逃してしまっていて、本当にもったいないと思います。

「うちの社長にそれだけの度量・器量があるか」

 この事件の顛末を見ていて、以前社団法人 日本パブリックリレーションズ協会の座談会で、電通(当時)の濱田逸郎さん、ネットレーティングスの荻原雅之さん、クロスメディア・コミュニケーションズの雨宮 和弘さんと盛り上がった話を思い出しました。

 「社長が、記者会見を開く前にブログに書くべし」
 「社長が、掲示板で正論・反論を展開すべし」

 詳しくは、ネットでも閲覧できる会報の記事「ネット社会の企業コミュニケーション」をご覧ください。

 しかし、この座談会の最後に、関係者から疑問が投げかけられました。

「うちの社長にそれだけの度量・器量があるか」

 予想外の意見に....見事にみんなズッコケたのでした。

 大きな社会的責任を持つ大企業の社長が、これでは困ります。元々社長が全責任を負っているオーナー中堅中小企業の方が、ブログでの発信に向いているかもしれません。

 先日、石川県小松市の商工会議所でブログ活用セミナーの講師を勤めた際に、江口組の江口介一社長と、耐震計算偽造問題を話す機会がありました。同社では事件の発覚後、ただちに全てのお客様に社長名で、「当社物件は問題なし」とダイレクトメールを出したそうです。

 ですから、ブログもあわせて書けば、もっと効果的だとお勧めいたしました。すると、「すぐにでも始めたい」というお礼メールが社長から直々に届きました。

「すべては、社長ブログに書かれている」

「社長の志なくしてブランドなし」
「社長自らのコミュニケーションなくしてブランドなし」

 折りしも、先週末に、岡康道さんと 吉田望さんの共著書「ブランド」を読み返していて、そんなメッセージに共感いたしました。

 今回の事件を見ても、ブランドを築くも守るも、社長の意思とコミュニケーション能力がきわめて重要だと再認識せざるを得ません。社長が持てば一騎当千となるブログなる武器を手にした今、ますます、社長の志と言葉が大切になるはずです。

 ちょうど、この「ブランド」という本に、スターバックス コーヒー ジャパンがNASDAQに公開した時の新聞全面広告の事例が紹介されていました。そこには、上場しても変わらないスターバックスの志が、細かい文字でびっしり書かれていました。

 この時マスメディアから寄せられた質問の数々に対して、同社の経営者は、こう答えたそうです。

「すべては、この広告に書かれている」

 きっと数年後には、記者会見や株主総会で、多くの優秀な経営者はこう答えるでしょう。

「すべては、社長ブログに書かれている」