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 元旦から「IT Pro」で興味深い連載が始まった。「新春Special 編集長の眼」がそれだ。IT Proの手嶋編集長は今年注目するIT 業界の動向として三つのキーワードを提示している。システム投資の変化、オープンソース、それにデジタル家電などの「ノンPC」だ。CRMの領域にも、これらのキーワードは大きく影響を及ぼしそうだ。

 昨年暮れから、私は「タブレットPC」の米国動向を調べている。その結果、かなりの数のタブレットPCがCRM関連業務に利用されていることがわかった。日本市場ではタブレットPCはあまり普及していないとの認識が強い。日本と米国では、タブレットPCの適用度合いに大きな差がありそうだ。

 私はタブレットPCを「次世代型PC」と受け止めている。特にペンを使って入力するスタイルのインタフェースが象徴的だ。これまでユーザーは何の疑問も抱かずにキーボード入力を受け入れてきたが、ペン入力のスタイルは現場における作業を大きく変える。顧客と話をしながら片手に持ったタブレットPCを操作する姿は、キーボートと向かい合う姿よりずっとスマートで自然だ。タブレットPCは店頭や客先などの現場における入力媒体、記録媒体としてCRMを大きく変えそうだ。

「比較文化論的CRM」
 私は以前から、日米の比較を関心のより所としてきた。米国の動向を調べ、米国には存在するが日本にはないものを見つけ出し、日本にはなぜそれがないのか理由を調べるのである。

 マーケティングの原理からすると、米国にそれがあるのは市場機会が十分存在するからだ。日本にないのは、日本に市場機会がないか、ほかに何か特殊な理由があるからである。

 例えば、顧客志向を貫くために業態まで転換した企業は、米国にはあって日本にはない。私が1992年ごろから注視し続けている米国の家電量販チェーン、RadioShack(ラジオシャック)がその一社だ。

 ラジオシャックのWebサイトで社歴をひもといてみた。昔の社名はTandy(タンディ)、業態はなんと家電メーカーだった。1977年に歴史上最初の量販型PC、「TSR-80」の製造・販売を始めた。ところが現在では家電製品の販売とサービスを担う流通業に転換している。

 1977年当時、私は日本の家電メーカーの系列店政策を調査していた。ラジオシャックに注目したのは、製造から販売へ大転換した希有な企業で、家電メーカーの系列店政策に大いに参考になると感じたからだ。

 私はタンディのマーケティング担当副社長にインタビューした。その副社長は、「当社は米国世帯の8割を知っている」と豪語していたのをいまでもはっきりと思い出す。同社は当時すでに、巨大なデータ・センターを運用しており、テラバイト規模の顧客データベースを構築し始めていた。

 並行して私はある経済誌の特集記事にも協力していた。経済誌の記者が「ある日本の家電メーカーのトップにインタビューするが、なにか面白い質問はないか」と私に聞いてきた。当時その家電メーカーは系列店政策の巧拙が、今後の社の業績を大きく左右すると言われていた。そこで私は「タンディの話題を振ってみたらどうだろうか。タンディの話題に反応を示すようであれば、そのメーカーの先行きは明るいはず」とアドバイスした。

 実は私もそのインタビューについて行った。記者はタンディの話を振ったが、家電メーカーのトップは何の反応も示さなかった。その後しばらくして、その家電メーカーは業績不振に陥り、大規模なリストラを敢行した。

 別の筋から聞いたところ、その家電メーカーが業績不振に陥った理由の一つは、顧客のニーズを把握するのに失敗したことだったという。そしてその家電メーカーはいまだに、顧客志向へのシフトが完了していない。

 さて、2006年も引き続きCRMをレポートしていくつもりだ。明日以降、今年私が特に注目している動きを順次紹介していこう。