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 日経システム構築「SEを元気にする12の言霊」の取材で金子さんにインタビューを行ったのは、2004年の1月、寒い冬の日のことだった。待ち合わせ場所は、金子さん自ら講師を務める「示現塾」があるビルの入り口だ。約束の時間になると、思いもよらない方向から金子さんが白い息を吐きながら歩いてきた。それも、本を読みながらだ。一瞬たりとも時間を無駄にしないということだろうか?

 何の本を読んでいるか訪ねると、「シャドーイング」というトレーニングをしていたとのこと。これは、本を見て、その内容を本を閉じてから頭の中で復唱するというものだ。何の本でもいいが、英会話の本がお勧めとのこと。金子さんは、1つ前の駅で下りて、目的地までの約30分間シャドーイングすることを日課にしている。歩きながらシャドーイングすると効果的らしい。

 記事のタイトルに掲げた言霊は「今日死んでも悔いはない!」だ。金子さんは、朝起きて鏡に向かうと必ずこの言葉で自問自答し、「悔いなし」という答えを言ってから出勤するそうだ。これは、今日一日を完全燃焼しようという意味だ。インタビューとは、不思議なものだ。10年ほどのお付き合いがある人であっても、初めて聞く考えがポンポン出てくる。どうして今まで教えてくれなかったのかと聞くと「聞かれなかったからだ」との返事。ごもっとも。インタビューだからこそ、聞く側も普段の会話の話題とは違ってくるのだから。

 さて、誰でも中学生や高校生ぐらいのときに、人生の意義を考えるものだ。金子さんは、高校時代に「人間が生きる理由を知りたい」と思い、3年間で約1000冊の本を読破したそうだ(考えることは一般的でも、やることが普通じゃない)。そして、1つの結論が出た。それは、「幸福になる法則や原理というような便利なものはない。だから自分で設定し、実行せよ」だ。人間は、いつか必ず死ぬ。毎日それを意識することが大事なのだ。死を意識しないでただ何となく生活していたら、生きる意味や目的など見つかるわけがない。毎朝「今日死んでも悔いはないか?」と自問自答するのは、忘れてはならない大原則(人は必ず死ぬ)の確認なのだ。たとえば、公認会計士の試験を受けるために累計で10000時間の勉強をし、もしも試験の前日に死んでしまっても悔いがないように生きる。そうすれば、人生の目的が明確になるのだ。こりゃスゲェや! 私には、真似などできそうもない。

 金子さんの勉強方法も聞いてみた。基本的に独学であり、1つのテーマに対して著者が異なる3~4冊の本を買う。それぞれの本の中で、解説が異なる部分を探す。それによって、何が論点であるかがわかる。違いを比較・熟読することで、大事なポイントがつかめる。

 人間は100歳になってもボケないと思っている根拠も聞いてみた。金子さんは、スポーツジムで体を鍛え、十分な体調管理をしている。いやでも平均寿命程度は生きてしまいだろうから、頭も衰えさせないでおきたい。そのために、シャドーイングのようなトレーニングをしている。シャドーイングは、記憶力を増したり、頭をよくするためのもでなく、知識を吸収する素地のある頭脳が保つためのものなのだ。だから、読む本は、英会話でも何でも構わない。頭を鍛えていれば、100歳になってもボケない。

 金子さんは、人生の折り返し点と言える年齢になって、社会に対して何かを与えたいと思うようになった。そこで、これまで自分自身を実験台にして編み出した効果的な学習方法の体系化に注力している。示現塾を開いて後進の指導をしている。「金子流 ITエンジニアのための勉強の法則」(うれしいことに間もなく発売されます!)という本も執筆している。もしも、金子さんが実践してきた勉強方法のいくつかは間違いだったという結果になっても、何も悔いはないそうだ。何たって、今日死んでも悔いはないのだから。

 金子さんは、冗談まじりに自分のことを「陸海空を制覇した男」と呼ぶ。陸海空とは、趣味でやっているバイク、スキューバダイビング、パラグライダーを指す。死を意識する練習なのかと聞くと、「いいえ違います。焼き付きを防止するためです」とのこと。毎日を完全燃焼していると、頭の中が焼き付いたようになってしまう恐れがある。眠れなくなったり、ひどく不安になって何も手につかなくなったりする。死に向かって全速力で努力をするためには、まったく逆に何も努力をしない時間を意図的に作り出すことが重要なのだ。若くして挫折したり、引退するような人は、焼き付いて頭脳の糸が切れてしまったのだ。金子さんのバイク、スキューバダイビング、パラグライダーという趣味は、何もかも忘れられる最高の気分転換なだの。う~む、納得!

【1月27日訂正】本文第7段落中で,金子則彦さんが執筆した書籍名が間違っていました。「金子流 ITエンジニアのための勉強法」とありましたが,正しくは「金子流 ITエンジニアのための勉強の法則」です。お詫びして訂正します。文中の表記は修正済みです。