一時のブームで大手企業から独立した情報子会社も,9割の“女衒”ビジネスのお仲間です。情報子会社は口を開けていれば,親会社から仕事が来ます。 親会社やグループ企業のIT予算に準拠したリソ-スで,コントローラブルな利益を獲得できます。業務力があると言っても,単に親会社の業務を知っているだけ。体系的に業務や経営を学習したわけでもありません。マーケットを開拓する精神や厳しさも見えません。しかも,他のITベンダーに比べてテクノロジーも弱く,経営者も親会社では部長どまり。親会社やグループの100%下請けのノーリスク経営です。
情報子会社の辞書には,投資効率なんて言葉はありません。 親会社の要件担当は同類のITオタクです。経営や幹部も「ITは傍流」と思っています。お互いがぬるま湯だったのです。そんな情報子会社の存在は,親会社の経営戦略を支援する高度IT化への足を引っ張ってきました。
今,そんな情報子会社の親会社回帰現象が多くの大手企業で見られます。大手企業の多くが,ITを経営戦略に寄与する競争優位のツールとして認識したからです。しかし,賃金格差が子会社化の狙いでしたから,子会社吸収は現実的には難しい。そこで,親会社への逆出向がブームになりそうです。
先進ユーザー企業のCIO(最高情報責任者)は,情報子会社を含めたそんなITベンダーに依存せず,自分達で動き出そうとしています。市場競争は需給均衡により適切な落としどころに収束します。
IT業界のあるトップは「顧客が要件を言えないから問題だ!」と声高に言っていました。業界団体は業界組合ですから,100歩譲ってこの意見を認めるとしても,誉められたものではありません。しかし,上述したように日本経済の環境が大きく変わってきました,失われた15年で学習し,IT利用に遅れてきた日本のユーザー企業が長い眠りから覚め始めたのです。お客が変わってきたら,正の需給均衡が生じ,新たな均衡収束点をクリアーできないITベンダーは市場から退出させられます。