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 ITベンダーの多くは,開発工程に閉じこもることで人月ビジネスを守り,ローリスク・ローリターンなビジネスモデルを成立させてきました。それを捨てることが変化への最初の一歩です。つまり,ITは目的ではなく,経営課題を解決するツールであるという認識です。解決手法はITだけではありませんが,ITは非常に有効なツールです。

 ノミやカンナは大工の道具であり,電動になっても道具であることに変わりありません。宮大工にとって,自分の腕を活かす道具はとても大事なものですが,それでも道具はあくまでも道具です。

 システム・インテグレータは大工と同じであり,ITは経営課題を解決するための道具です(IT村の村民の中にはITを道具と言われることを,自分のレーゾンデートル(存在理由)を脅かされるかのごとく反応する人がいますが・・・)。

 戦略やビジョンや経営目標や新商品サービスやライバルの動きや市場変化や経営リソースや経営効率・・・。様々な問題に対応するのが経営です。それを支援するのが戦略コンサルタントです。その段階ではまだ,解決の道具としてITの話はありません。次に,戦略を実現するための戦術化の段階で,ビジネスプロセス・モデルを策定したり,問題から課題を抽出します。この工程で,IT化の対象となるテーマについてIT系の人間の参画が必須となります。

 これまで,IT屋が関与してきたのは,それ以降の要求定義工程からでした。要求定義という言葉自体,ITをソリュ−ションとすることに決めたという前提です。要求定義は大雑把な概念要求を入力とし,システム要件への詳細定義する作業です。それは,基本設計という具体的ソリューションに繋がっていきます。

 経営とITの間には,大きなGulf(溝)や死の谷があると言われています。要求定義を含む,ここらの工程が曖昧だったからです。ITの人間が,戦術化の段階で参画するのを嫌っていたからです。


戦略の修正を含む大きなPDCAが回っていない


 ITのインプリメントに責務を負わないコンサルが支援しても問題は解決しません。コンサルが参画することでGulfが深くなってしまうケースもあります。ITを知らないコンサルが美味しいことを作文する。IT側は,「非現実な夢物語であり,構築にかかわる仕様は書いていない」と罵倒し,再度,頭から昔ながらの現場ヒアリング手法で要求定義をやり直してしまうことも少なくありません。

 日本人は戦略という言葉は好きですが,戦略思考は苦手です。抽象的な戦略論を一般論として単に語るだけならそんなに難しいことではありませんが,難しいのはそのインプリメントです。戦略を戦術(タクティクス)に落とし,経営リソースの成熟度をかんがみて,戦略目標の成果を,効率的に得るためのビジネスプロセス・モデルを策定する。さらに,それらをモニタリングし,戦略にフィードバックするPDCAの仮説検証サイクルを回すことが「経営」です。

 日本はトップダウンではなく強い現場を持っています。しかしそれ故に,戦略上流と現場が一気通貫になっていない企業が多いのです。PDCAは回っていても小さなサイクルです。戦略の修正を含む大きなPDCAサイクルが回っている例は少ない。戦略上流と構築下流に挟まれた戦術(タクティクス)中流が詰まっているからです。そして,この中流こそが経営と現場とITの合流点なのです。