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 トリノでは毎日熱闘が繰り広げられていますが、日本選手がメダルを取れないことに失望する報道が目立ちます。会期半ばにして、30年ぶりにメダルがゼロではないかとの観測さえ流れる始末。マスメディアの報道だけでは、選手も観衆も心が冷える一方です。

 しかし、選手とファンとを直接結びつけるブログでは、ひそかに、驚くほど濃密で感動的なコミュニケーションが交わされているのです。こうした選手ブログに寄せられたコメントの数々を読めば、思わず胸が熱くなるでしょう。

 今回は、女子モーグルで見事5位に入賞した上村愛子選手のブログなどを例に取りながら、選手ブログと応援ブログを通じた「選手とファンとの理想的な関係」について考えてみましょう。

IOCは会期中の選手ブログを禁止したが....

 IOC(国際オリンピック委員会)は、アテネ大会と同様にトリノ大会でも、会期中の選手によるブログ更新を「ジャーナリズム」として禁止しました。「違反した場合は参加資格認定が取り消されることがある」とまで明記してあり、かなり厳しい内容です。(asahi.com:選手のブログ「トリノ期間中は駄目」注意を呼びかけ

 この決定を残念だと思ったファンは、おそらく私だけではないでしょう。おそらく、ブログが解禁されていれば、マスメディアの取材やインタビューでは伝えきれない、大会の舞台裏や選手の内面を垣間見ることができたはずです。

 また、ブログでの情報発信に熱心だった選手たちも、きっと残念に思ったことでしょう。もし会期中、それも試合前後にブログを更新していたら、その記事は、これまでのアクセス記録を塗り替えることは間違いないでしょう。

 しかし、もしブログが解禁されていたら....IOCや、各メディアのWebサイトのアクセスは激減していたかもしれません。各選手のブログにアクセスが分散してしまう可能性が高いからです。ですから、人気選手が集めるであろうアクセスをわがものとするため、そして、広告収入を稼ぐため、各メディアは慌てていたはずです。おそらく人気選手にわがサイトでブログを書いてもらおうと囲い込み合戦になっていたでしょう。

選手ブログの魅力は果てしない練習の様子と飾らない素顔

 「上村愛子オフィシャルブログ」は、いまやWoman Exciteの目玉ブログのひとつでしょう。昨年2005年5月開始のブログを読み続けていれば、上村選手に対する印象は、大会前にマスメディア報道だけを眼にした人とは一味も二味も違っていたはずです。

 上村選手のブログは、飾らない女の子らしい語り口で書かれています。中には、ネットでおなじみの絵文字なども登場して、携帯メールを交わしているようなフレンドリーな雰囲気です。しかし、そこに登場する内容の多くは、練習、練習、練習....なのです。練習メニューが書かれてるわけでもないのに、日々厳しい練習を繰り返していること、その合間にブログを更新していることが伝わってきます。

 そして、あの決勝で見せた男子顔向けの大技エア「コーク720」も、一朝一夕に出来るようになったのではないとわかります。少しずつ難しい技に挑戦して、失敗をしたり、故障をしたり....腰が痛くても、オフの日でも、腹筋などを欠かさない....まったく頭が下がります。

 マスメディアの取材やインタビューで、自分を飾らずに言いたいことを言える人は稀でしょう。しかし、ブログなら素顔を見せられる、友だちに話すように雄弁になれる人が多いはずです。

 例えば、今年の元旦ブログには、こんな一節があります。

「小心者の愛子は(笑)「がんばる!!!」という言葉で気持ちをもりあげて、気合を入れて、どきどきの気持ちがわからないくらいでいたいと思います^^」


 小心者....意外です。さらに全文を読めば、当人にしかわからないドキドキが伝わってくるでしょう。そして、メダルうんぬんの前に、あがらないで滑れるよう飛べるように祈りたくなるでしょう。

更新はされなくともコメントは集中した

 上村選手のブログは、IOCルールを守って、2月9日を最後に更新が止まっています。その記事には素顔の写真=「選手村から抜け出して(笑)、お母さんや友達とリラックスしてる図」が添えられているのが印象的です。しかし、試合前後の「報道されないドラマ」や「心の葛藤」を知ることはできないのが残念です。

 それでも、この1年間、上村選手のブログを愛読して、不断の努力の一端を見つめてきたファンは、あの大きなエアが決まった瞬間に、まるで家族のように歓声を挙げたことでしょう。そして「メダルが取れなくて残念だった」などというありきたりの感想を持つ前に、大きな拍手を贈っていたでしょう。

 それは、上村選手の大会直前ブログに寄せられた、1844件ものコメントと230件ものトラックバック(2月21日午前2時現在)にもよく表れています。これは驚くべき数字です。

メダルがわりの謝辞がブログ読者から贈られる

 さらに驚いたのは、そのコメントやトラックバックの中身です。寄せられたメッセージには「感動した」「ありがとう」というあたたかい言葉が並んでいるのです。もちろん、エキサイト・ブログのスタッフが誹謗中傷などチェックしていることもあるでしょうが、総じて好意的なメッセージが寄せられています。

 メダルを期待されていた選手が、満足のいかない結果に終わった時の「無言のプレッシャー」と「自責の念」の大きさは、おそらく想像を絶するものでしょう。そんな時、こうしたあたたかいコメントの数々は、選手にとって大きな励ましと救いになるはずです。

 今回、上村選手は残念ながらメダルは取れませんでしたが、その代わりブログを通じてファンの生の声援を受け取ることができました。これは、ブログが普及する以前の選手たちには与えられなかったご褒美でしょう。

 メダルが取れるか否かは、大会当日の「縁・運・勘」にも左右される分がありそうです。しかし、ブログのコメントをいただけるか否かは、大会当日までの「運・鈍・根」、即ち努力を続けた地道なプロセスにかかっているのではないでしょうか。たとえ、大会後、熱しやすく冷めやすい一時的なファンがいなくなっても、ブログを続ける限り応援し続けてくれる真のファンが心の支えになりそうです。

ブログが選手の身心に良い影響を与えるために

 とはいえ、大会前後にブログが選手に対して好影響を与える、そして好成績を収めるためには、いくつかの条件が必要不可欠でしょう。

 まずは、毎日規則正しい時間に、適度な時間でブログを書くように、トレーナーが指導すべきでしょう。上村選手の記事にも、ブログを読み書きしているうちに、ついつい夜更かしをしてしまうという一節がありました。ブログが楽しいとはいえ、睡眠時間や練習時間に影響してしまっては本末転倒です。

 それから、心ないコメントやトラックバックが選手の眼に触れて、試合前に心がかき乱されないように、トレーナーがしっかり守ってあげる必要があります。選手が読む前に、ブログのクリーンアップをしておくと良いでしょう。

 さらに、ブログの一番の読者である選手自身に自信と安らぎを同時に与えるような「記事の書き方」「言葉の選び方」を、トレーナーが教えるべきだと思います。慣れれば、ブログを書く時に、瞑想している時と同じような安定した脳波の状態を作ることができるはずです。毎日、そんな境地で、勝利のイメージを思い描き、前向きな言葉の数々を書いては眼に焼き付ければ、立派なメンタルトレーニングになるはずです。そうすれば、本番に弱いといわれる日本選手たちの欠点も補うことができるでしょう。

 つまり、通常の健康管理に加えメンタルヘルスにも詳しい、そしてブログの何たるかも理解している新しいタイプのトレーナーが「チームaiko」にも必要となるでしょう。

再開後の上村選手ブログはいかに発展するか?

 上村選手は、大会終了を前に一足先に帰国しました。まだブログは再開されていませんが、次の第一声に期待が集まるでしょう。

 帰国後のインタビューでは、エア前後のターンを極めて、新たな挑戦を続けるとの決意が伺えます。はやく公式ブログでの肉声=4年後に向けての決意を聞きたいものです。

▼上村愛子選手のブログ
  http://blog.excite.co.jp/aikouemura