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 私は1月の後半から,某通信会社のパートナー企業---いわゆる販売代理店だ---でテレセールス業務の監修と指導を請け負っている。

 ただ監修・指導で終わらせるつもりはない。私はテレセールスの“現場”,つまりテレセールスの担当者が電話をかけるその場に足を運び,様々な策を練ったり,担当者といろいろ話をしながら業務を進めている。そこでは多くの体験がある。このような言い方をするとそこで働いている人に逆に失礼かもしれないが,本当に面白い。毎日,新しい発見があるのだ。

 例えば,大企業のブランド力は地方に行くほど絶大であることを再発見した。普通はテレセールスがいきなり電話をかけても,「は~? 何の用?」と相手に言われるか,いきなり電話を切られるのがオチである。ところが「○○(大企業の名前)の販売代理店です」と言うと,まずは話を聞いてくれる。テレセールスはそこですかさず,販売したい商品,サービスの話を切り出すわけだ。

稚拙なテレマーケティングが生み出した惨状

 だからこそテレマーケティングには負の側面がある。例えばNTT東日本のWebサイトには,「NTT東日本をかたったセールスにご注意ください」と書かれている。かなりの数の事業者が,ブランドであるNTTを詐称して何らかの販売活動を実施しているというわけだ。

 最近,特にテレマーケティングに熱心なのは通信業や保険業である。私が仕事で関わっているような販売代理店が多数のテレセールス担当者を雇い,多数の見込み顧客に対して多数の電話をかけている。

 ところが,私に言わせるとまだ通信業や保険業のテレマーケティングは稚拙だ。見込み客に対してただひたすら電話する,という“直球”ばかりである。その稚拙なテレマーケティングの結果,顧客は不満を積み重ねつつある。

 私が関わっている販売代理店では,次のような事態が発生している。テレセールスの担当者が電話口で「○○(大企業の名前)の販売代理店です」とブランドを名乗ると,顧客から逆にそのブランドに対する疑念や不満をぶつけられる。往々にして,テレセールス担当者は本題であるセールス活動に入れなくなるのだ。例えば次のような格好だ。

テレセールス担当者:「○○(大企業の名前)の販売代理店です」

顧客:「ここのところ○○,○○とずいぶんあちこちからから電話がかかってくるのだけれども,あなた本当に○○?」

テレセールス担当者:「はい,そうです」

顧客:「最近○○からの電話が多くて困っているのだけど…」(以下,延々と○○社に対する苦情が続く)

 確かにこれではなかなか本題には入れない。しかし私は「それでもうんうんとうなづきながら顧客の苦情を聞くように」とテレセールス担当者に指導している。お客様との信頼関係の醸成が始まる第一歩は,ともかくも誠実にお客様の声を遮らずに傾聴することだからだ。

 この指導が実を結び始めている。テレセールス担当者の態度を評価して,他社に出していた注文を取り消してこの会社に注文を切り替える顧客がポツポツ出てきているのだ。

 テレセールス担当者らは時折,顧客から「本当に○○の代理店ですか?」と尋ねられることもある。代理店は街に店や事務所を構えていて,そこに代理店契約に基づいた看板を掲げている。ところが電話では,その看板は顧客には見えない。インターネットで検索しても,その代理店の名称や所在は確認できない。

 いきなり「○○の販売代理店です」と電話をかけて不審がられるのは本意ではない。そこで私は代理店に次のように指示した。まず,電話をかけるリストから標的となる顧客を抽出。事前にダイレクト・メールを投函する。その際,お仕着せのダイレクト・メールは使わず,その販売代理店の名称や個性がきちんと認識できるような見せ方にするよう,コピーなどに気を配る---。

 ダイレクト・メールの効果は大きかった。こちらから電話をかけずとも,顧客が能動的に注文や問い合わせをする数が増えたのだ。言わずもがなのCRMの基本である。基本に立ち返って物事を考えることは大切だと実感した。

 顧客との対話を記録として積み重ねていくと,顧客の期待や要望が浮かび上がってくるような記録が次々と見つかる。このお客さんにこういうプレゼンテーションができれば,きっとこの商品やサービスを買ってもらえるだろう。私は現場にいてもついつい,こんな独り言を言ってしまう。

編集部注:著者の申し入れにより,具体的な企業名などを削除したうえで一部記述を変更しました(2006/03/24)