「キャリアアップなんてしなくても、今のままでいいのに。そっとしておいてもらいたいなぁ」そんな気分の方はおられませんか?そもそもキャリアは個人のものですから、他人がとやかく言うのは大きなお世話かもしれませんね。
キャリアアップというと、昇進や収入の増加、あるいは資格取得などを連想する方も多いのではないでしょうか。HowToものを中心としてスピードや上昇が強調され、そのための手段が語られがちですよね。仮にキャリアが職歴だとすると、それがアップするというのは職位の上昇、いわゆる出世をさすのでしょうか。
それにしても、「早く課長や部長になりたい」という人もいれば、「マネジャになったら部下や仕事の管理に時間をとられて、自分の技術を磨けなくなりそうだから嫌だ」という人もおられるでしょう。例えば、ITプロフェッショナルが専門分野のスキルに磨きをかけるとか別の分野で活躍するようになるというのは、キャリアがどうなったというのでしょうか?深まったとか、横滑りしたとか?
ある会合で「キャリア論の大家であるサビカスさんという方が『キャリアにはアップもダウンもない』と諭された」というエピソードをお聞きしたことがあります。筑波大学教授の渡辺三枝子さんからうかがったお話ですが、思わず、なるほど!と膝を打ちました。キャリアはそのひと独自の歩み、車の轍なのだから、そもそも上がるとか下がるというものではないと。
わたくしはキャリアについて、各々の経験からなる仕事生活の道程を、本人がどのように意味づけ、価値を見出すかが大切だと考えています(前回の記事)。「暗礁に乗り上げたときほど張り合いがある」「仲間と一緒につくりあげるのがうれしい」「儲かってこそヤッターと思える」など、いろいろな価値(良い意味でのこだわり)や基準が一人ひとりにあるでしょう。ですから、それを何かひとつのモノサシで測れるかのように、一律にアップしたとかダウンしたと騒ぐのは、個人的にはしっくりこないところがあります。
もしも、よいキャリアというのがあるとすれば、日々の仕事や生活のなかに「自分の個性を思いきり発揮できている」とか「夢の実現へと前進している感覚がある」とか「大変だけど意義ある仕事をしていると思える」などの充実感や納得感、満足感があるような、そういうのがイキイキ☆キャリアといえるのではないかと思います。たとえ素晴らしい将来を描いていても、その道程は苦痛しかない毎日というのでは、やりきれませんものね。ガマンしつづけても必ずしも将来が保証されるわけではない、と考える人も増えている感じがします。
もちろん、昇進して権限が増えれば自分で決めてできる仕事の範囲が広がるし、収入が増えればお金で手に入るものもいっぱいあります。それらはキャリアを歩むうえで重要な要素であるに違いありません。資格取得も動機や目的によっては、取得までのプロセス自体にも意義がありそうです。
ただ、昇進や収入などは客観的に見えやすい要素ですが、「他の人からみた価値」を常に優先させていると、自分らしくイキイキとしたキャリアを歩むのは難しそうな気がします。「そっとしておいてもらいたい」という気持ちには、「他人からみた価値vs自分にとっての価値」の葛藤も、ちょっぴり関係しているのではないでしょうか。
この葛藤やモヤモヤした感じから脱出するにはどうしたらいいのでしょうか。そのための処方箋は?マニュアルは? つづきはまた。
それでは、今日もイキイキ☆お元気に。