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 前回「SEのアプリケーション力」について書いたが,早速ユーザーの方々からたくさんのコメントをいただいた(コメントを見る)。心から御礼を申し上げるとともに深く感謝したい。IT企業の方々は,そのコメントを真摯に受け取って今後の参考にして頂ければ幸いである。

 筆者は,システム開発を行うSEは少なくとも「アプリケーション」と言う言葉が実感でき,分からない点はお客様に気楽に質問でき,それを理解できるレベルになることが必須だと考えている。

 今後も,IT企業の方々に対してユーザー方の意見の“橋渡し役”となることができればと思う。

 さて,今回の今日の一言だが…

 第一線のSEがシステム開発や提案活動を行う際には「組織や人を動かす力」が必要な時がある。

 例えば,難しいトラブルに遭遇して技術に強いSEの力を借りたい時や,お客様の部課長にある協力をお願いしたい時,上司にある問題を決着つけてもらいたい時など様々な場合がある。それができるかどうかが,システム開発や受注の成否を左右することが少なくない。もちろんお客様のご満足度にも影響するし,会社の売上げや利益などに大きく影響することさえある。

 そのため第一線のSEには「自分は何かあった時,社内のSE関連組織や人を動かせるだろうか? お客様を動かせるだろうか?」と時々自己点検することを勧めたい。そして,その答えが「?」なら「組織や人を動かす仕事のやり方や立ち回り方」を身につける必要がある。

 若手SEはともかく,中堅SEレベルになればこの能力は非常に重要である。もちろんSEマネジャやPMやチームリーダーには必須だ。その力がないと「あの時にあれをやっておけばよかったのに…」と後で悔やむことになりかねない。

 しかし,現実には多くのSEがこのような面を敬遠しがちである。「そんなことはSEマネジャやPMや営業の仕事だ。自分には関係ない」と思っているSEや「そんなことは自分は苦手だ。非IT的なことは嫌いだ」と言って逃げているSE,また「技術屋はそんなことをやるべきではない」と考えているSEが多数いる。

 しかし筆者は「第一線のSEがそれでよいのだろうか?」と思う。「技術的なことだけやっていればそれで仕事がうまくいく」と思っているのだろうか? また,「そんなSEがPMやチームリーダーやSEマネジャになったとしたら,部下が困った時に助けることができるのだろうか?」と疑問に思う。

 例えばあるソフトのトラブルが発生し,その原因を調べたがなかなか分からなかったとする。SEマネジャに応援SEを頼んだが埒があかない。そこでお客様に,修復するまでマシンの運用スケジュールを変更して各支店に残業してもらうようにした。その間,SEチームは徹夜も辞さず,毎日原因追求のため一生懸命頑張った。しかし結局,修復に4日間を要した。

 一方,もう一方のSEチームはお客様に迷惑をかけてはまずいと考えた。SEマネジャに側面から援助してもらい,社内のSE関連部門を動かして,経験豊富なSEに現場に来てもらい2日で解決した。

 この2つのSEチームのどちらをお客様は評価されるだろうか?どちらを喜ばれるだろうか? 言うまでもなく後者だ。

 このたぐいのことは,システム開発や提案活動の中で頻繁に起きる。お客様は担当SEチームの技術力を買って契約しているのではない。そのIT企業を信用して契約している。従ってSEは,「自分達の力だけではお客様に迷惑をかけそうだったら,会社が持っている技術力をできるだけ動員できる力を持つ」そう考えるべきだ。

 一方,お客様に対しても働きかけるべき時がある。例えばプロジェクトの進捗が芳しくなくこのまま進むと危ない。そんな時にはPMやSEがお客様の部課長に飛び込んでお客様を動かすべきだ。打開策を双方で考え,お互いに手を打てば,未然に問題が防止できる。大きな問題になることなく,お客様にも迷惑をかけずにすむ。

 以前日経コンピュータにも書いたが,筆者は「会社のビジネス目標の達成とお客様のご満足の達成」が第一線のSEの職務だと考えている。そしてこの「組織や人を動かすこと」をおろそかにしてその職務は全うできないと思っている。

 この職務を否定するSEはともかく,「確かにそうだ」と思う方は,ぜひ組織や人を動かす仕事のやり方や,立ち回り方の腕を磨いてほしい。そしてそれを後輩にSEに教えてほしい。腕の研き方についてはまたこのブログで書くつもりである。

 読者の中で現在「あの件で○○さんと交渉し△△を云々」と思いながらそれを躊躇している人は,ぜひ今日,度胸を決めてやってみてほしい。これが今日の一言である。