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 私はシステムを構築する際に,ユーザー企業が主導権を持って行うことを心がけてきました。

 丸投げは一見,情報システム部にとって楽なように見えます。しかし,システムがブラックボックス化するためにかえって苦しむことになったというのが私の経験です。

 私が入社した当時は,毎日のようにトラブルがあり,深夜まで残業するシステム部員が多数いました。ブラックボックス化したシステムを運用することは非常に困難なものがあります。トラブルのときに何が原因か切り分けることができないからです。

 そのため,そのトラブルの原因を突き止めて修正するのではなく,そのトラブルが起きないよう利用方法を制限した運用を利用者に強いることになります。

 複数のベンダーが混在するようなシステムのトラブルになると,明確な切り分けが必要になります。そのため,トラブルが起きた後の復旧方法を箇条書きにまとめ,その都度対応するという保守的なルーティンを作成していました。その保守的なルーティンを多数こなせるのが,頼れるシステム部員ということになります。

 このままではいけないので,できることから内製化をはじめました。最終的には基幹系のシステム仕様をすべて分析し,自社で対応できるミドルウエア群に変換したりしました。こうすることで,トラブルを元から排除できる環境を構築しました。実際トラブル時には,自社で解析し,変更・修正を繰り返してきました。

 効果として,自社責任で対応している箇所はトラブルがなくなり,保守的なルーティンもすべて消滅し早く帰社できるようになりました。

 自社で開発・保守すると,トラブル時に責任を押し付ける先はなくなります。しかし他社の責任にしても,根本的な解決になりません。自社で責任を持つ,持てるシステムにすることが,実は会社にとって一番理想的な形なのです。そのためには経営者の理解がかかせません。

 アウトソーシングとは,ケース・バイ・ケースですが,会社の機能を外部に委託するものであり,手足を縛られることを意味します。かっこいいものでも理想のものでもありません。外部の力を借りることで,すべてを自社で賄うよりも,最大の経費である人権費を節約する効果はあると思います。

 またネットワークなど複数の企業で共有できるインフラのようなものは,自社で保有するのではなく,サービスとして利用した方が効率が高いことも事実です。

 ただしアウトソーシングする部分が問題です。会社のコアとなる部分は,可能な限りアウトソーシングするべきではないと考えています。なぜならば,簡易な変更するにも,様々な手続きが必要となりますし,現代の経営ではスピードが重視されるにもかかわらず,システムが足かせになってしまいます。事業のノウハウ自体も内部に蓄積されません。

 コアの部分とは,事業における人間系の作業であり,それをIT化した部分,すなわちアプリケーションを意味します。事業のコアの部分はその会社で賄う。ことさら説明する必要もない,本来あるべき姿です。

 しかしそれを実現するためには,人員体制を含めてITに対する理解をしていただけるように,根気強く様々な層に対して説明し,納得していただく作業が不可欠だと感じています。そういった意味では,私も志半ばといったところです。