どんなにコンサル教育をやっても,優秀なSEはSE思考に戻ってしまいます。クリティカルな対象には,慣れ親しんだ成功体験のある思考プロセスを持ち出すのが当たり前だからです。しかし,どうでも良い時にコンサル思考を持ち出しても,身に付きません。厳しい状況の時こそ,コンサル思考を使わねければなりません。意識して,「コンサル思考」と心の中で念仏を唱えるのです。コンサル脳はおおむねSE脳とは逆です。SEが自分で素直に考える考え方とは,全く逆の考え方になります。

 一番大事なのは,視点や思考プロセスです。思考はメタ認知や背景やコンテキストに縛られます。バイリンガルは,英語で話す時は英米人のような思考パターンになってしまうんだそうです。形と中身は想像以上に影響し合います。

 第三者の俯瞰的な自分が「コンサル脳で!」と指令しない限り,普段の視点や思考プロセスを切り替えることは無理です。

 人間は失敗して赤っ恥をかいたり,感激感動したり,大きく心が動かなければ,変われません。単に頭で分かってはいても腑に落ちていないと「AHA!わかった!」になりません。いかに腑に落とすか?そこらは教科書には書いてありません。

 自分にとって新しい概念をそのまま直接的に理解・納得できるようには,脳は作られていません。方法論やメソッドをどんなに理解しても,本質が腑に落ちていなければ役に立ちません。本質を知りたかったら,本質を原点とする半径5mの同心円上の比喩やアナロジーやメタファで悟っていくことになります。中心には何もなく,ネタはその周辺にあるのです。

 SE脳とコンサル脳を使い分けることは,SEをコンサルタントに転身させることとは違います。最近は“コンサル”という職業も広範囲です。私も含めて,コンサルと名乗れば誰でもコンサルです。ここで言うコンサルタントは,少なくとも専門に特化したコンサルではなく,専門のない戦略系コンサルの思考パターンをイメージしています。

 私にはコンサルタントの知人も少なくありませんが,優秀なコンサルに共通しているのは,圧倒的な地頭の良さです。戦略系コンサルティング・ファームの代表であるボストンコンサルティンググループでは,入社希望者のうち入社できるのは1000人に1人だそうです。地頭が良いのは選考の最低条件で,社員の7割程度が東大卒です。ですから,一般的レベルで言えば,コンサルタントはSEより地頭は良いでしょう。

 しかし,30代から40代のSEに向かって,頭が良い悪いの議論はナンセンスです。実際,すごぶる地頭の良いSEだって何人もいます。いずれにしてもSEは,経営と現場とITとが合流する「中流」に,プライドと責任を持って入っていかなければならないのです。