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 (前回から続く)要求開発アライアンスでは,Openthologyを日本発の価値ある方法論として,この分野の世界標準とすることを目指している。そのためには,より多くの方に実プロジェクトにおけるOpenthologyの有用性を分かりやすく伝える必要がある。理屈やコンセプトを見聞きするだけでは,実践のイメージはなかなかつかめない。やはり,実際のプロジェクトにOpenthologyを適用し,どのように要求開発を進めていくか,実例を示すのが効果的と言えるだろう。

 とはいえ,ここで一つ大きな問題がある。Openthologyは既に先進的なユーザー企業の実プロジェクトで利用が始まっているにもかかわらず,事例を公開するのが極めて困難なのである。事例の公開は,企業戦略やノウハウの開示につながるためだ。

 要求開発アライアンスの若手メンバーで構成されたコミュニティ「クラブネクスト」では,この点に配慮して,仮想的な事例にOpenthologyを適用するケース・スタディを作成することにした。

 ケース・スタディは,仮想的な企業である大手家具店「ReDA家具販売株式会社」が新経営戦略の実現に向け,ビジネス・モデリングを行うというシナリオである。企業概要や経営戦略については,可能な限りリアルな設定を用意した。本ケース・スタディは,2006年3月に出版された「要求開発---価値ある要求を導き出すプロセスとモデリング」(日経BP社発行)の第4章「実践ビジネスモデリング」にも掲載されている。

4人の女性メンバーが要求開発の進め方を熱演

写真 要求開発サミット2006のライブ・セッションの様子
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 こうして,要求開発の実例を示すためのシナリオは出来上がった。クラブネクストでは業界への発信に当たり,よりインパクトがあり,分かりやすいプレゼンテーションの形式を考えた。PowerPointの資料を提示し,講演者が一方的に解説する従来の形式では,長時間にわたって参加者の集中力を持続させるのは難しい。そこで,要求開発に取り組むメンバーの葛藤をライブ形式で実演し,幕間に解説をいれる「ライブ・セッション」というスタイルを考案したのである。

 ライブ・セッションでは,新経営戦略のもと新しいビジネスとシステムを検討する要求開発チームが,経営戦略からビジネス要求,さらにシステム要求を抽出し,後続のシステム開発につなげていく過程を紹介した。この要求開発チームを演ずるべく,クラブネクストの4人の女性メンバーがステージに立ってくれた。ジョージアラッパーズさながら,男性もののスーツにネクタイのいでたちで,要求開発の進め方を分かりやすく例示したのである。客席からは,「素直に聞けて理解しやすい。」など,多くの方からご好評をいただいた。

 2006年2月9日に目黒雅叙園で開催されたDevelopers Summit 2006では,準備フェーズにおけるプロジェクトのゴールの策定と要求開発プロセスの策定について紹介した。要求開発サミット2006では,準備フェーズに続いて,立案フェーズからデザイン・フェーズのモデリングにフォーカスをあて,要求開発の進め方をリアルに実演することができた。

 イベント参加に向けた準備では,経験豊富なアライアンス理事の協力を得て,何度か勉強会を開催した。台本の作成やステージに向けての練習の中で,方法論やシナリオの理解が深まり,クラブネクストのメンバーがスキルアップを図れたのも収穫だった。

 今回のライブ・セッションだけでなく,クラブネクストでは今後もOpenthologyの理解を深め,普及に向けて継続的に情報を発信していく予定である。加えて,実プロジェクトへの適用も積極的に進め,実践によるフィードバックにつなげたいと考えている。

(野田 伊佐夫=要求開発アライアンス/クラブネクスト主宰)

 「要求開発」は,要求アライアンスのメンバーが共同で執筆した書籍です。要求開発アライアンスが独自に考案した方法論であるOpenthologyをベースに,要求開発のプロセスや途中過程の成果物について分かりやすく解説しています。詳しくはこちらをご覧ください。