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 Webブラウザを使うとき,人は自ら情報を能動的に取りに行く。これに対し,テレビを見るときは,通常リラックスした状態で流れる映像を受動的に見る。つまり,インターネットを使うときはアクティブ(能動的)で,テレビを見るときはパッシブ(受動的),人間の状態としては違うモードだ。

 携帯で電話をかけるという行為は,人間がアクティブな状態なので,インターネットにアクセスするメールやブラウザと相性が良い。だが,テレビはそういう意味では対極で,何もしていない,何もしたくない状態,ケータイも使わないときに見るものだ。

 4月1日に始まったワンセグによって,このテレビが携帯の中に入ってくる(写真1,写真2)。このやや矛盾するような携帯向けのテレビ機能,ACCESSとしては当初から力を入れており,ワンセグ向けのブラウザソフトをNTTドコモやKDDIに提供している。また、放送局向けには,ワンセグ向けのコンテンツ(BML)を確認するツールとして,パソコン上で動作するワンセグブラウザのシミュレータも提供している(写真3)。

 昔,iモードを始める時,NTTドコモ(当時)の榎啓一氏は「iモードは人間のニッチな時間を消費する端末」と表現した。私が思うに,このニッチな時間にも2種類あって,暇だけど積極的に何かをしてみようという人間の状態と,何もしたくないOFF状態。iモードは前者を見事にとらえた。ワンセグが面白いのは,後者の人間のニッチなOFF時間をもとらえる可能性があることだ。

 まずは,地上デジタルのサイマル放送を流すということからスタートするが,これに加えてケータイ向けの味付けをするとかなり面白い応用が可能だ。

プッシュとテレビの連携

 ひとつのアイデアは,携帯の特徴であるプッシュの機能によって,テレビを視聴してもらうトリガーをかけようというものだ。

 ある人にとっては,見逃したくないシーンというものがある。例えばイチローのファンだったらマリナーズ戦のイチローの打席だけは必ず見たい。しかし,ずっとテレビに貼り付いている訳にもいかない。そんな時,イチローの打席が回ってきたら,プッシュで教えてくれるサービスがあったらどうだろう。あるいは,大相撲でこの力士の取り組みが始まったらプッシュしてくれるサービスがあったら。好きな選手,力士の出番だけを見逃すことなくリアルタイムで見ることができる。そんなサービスが,例えば月額300円で利用できればぜひ使ってみたい。

 会議中にケータイがブルッと震え,電話がかかってきたフリをして廊下に出て,肝心のシーンだけを見て会議に戻る,という人も出てくるかもしれない。テレビ受信は,電池消費が大きいので,ユーザは通常はテレビのスイッチをOFFにしているだろう。プッシュを受け取ると,テレビのスイッチをONにするというのは,消費電力の観点からも理にかなっている。

 もっとも,このようにピンポイントで番組を見るようになると,現在テレビ局が採用しているスポンサーモデルと合いにくくなるかもしれない。ひとつの番組でも広告価値の高い場面と低い場面を設けるといった形態になるかもしれないし,通信でユーザーごとにパーソナライズされた広告を出すといったことは十分考えられる。また,ワンセグでは,端末側のソフトを拡張すれば,視聴率をかなり正確にとることも可能である。こういった面からも,広告モデルが大きく変わっていく可能性は大である。

 通信事業者にとっても,従来のようなパッシブなテレビ視聴のされ方だけでは,あまりビジネスにならない。ユーザがアクティブに情報を取りに行ってくれることが重要である。データ放送は,ユーザをアクティブにするトリガーに使えそうだ。もともと、携帯を使っていないようなOFF状態から,テレビをトリガーに人間のモードをアクティブにできたとしたら,それは大きなプラスだ。

 テレビ付きケータイは日本以外にも多少はあるが,双方向サービスが可能なデジタル放送が視聴できるのは日本が最初。世界のどこにもまだ存在しないサービスだ。小さなケータイの上で始まった,非常に大きな可能性を秘めた,手のひらの上の通信と放送の融合だ。