私はいわゆる「Webデザイナー」ではありません。1年中,朝から夜(深夜?)までWebの仕事ばかりしているわけではないのです。いわゆる,グラフィックデザイナーではあるのですが,普通のグラフィックデザイナーと違うところは,皆さんがイメージされる広告やポスターなどのセールスツールのデザインのほかに,展示,サイン,CI(コーポレート・アイデンティティ),Webと,なんだかいろいろなことを手がけているということでしょうか。
ときおり,新規のクライアントさんに「いろいろやっているようですが,何が一番得意なんですか?」と聞かれることがあります。「得意ジャンルは○○です!」というのはおこがましい気がするし,「どれもそこそこ得意です」と答えるのもネガティブな感じだし,「うっ?,何でしょうねえ・・・」と本当に言ってしまったことがあります。その瞬間クライアントさんの目に「何でも屋かヨ,フッ」的なまなざしが浮かんだのは,痛かったですね・・・。
といっても,本当に何でもかんでもやっているわけではなく,できるわけもありません。デザインのジャンルは違っていても,そこに共通しているのは「より良いコミュニケーションをするためには良いデザインが必要」ということなのです。ここがきちんとわかっていれば,デザインのジャンルは様々にわたっていても基本は同じで,ただの「何でも屋」とはちょっと違うのです。
デザインというのは,装飾することでもないし,アートでもない。かっこいいデザインが良いデザインとは限らないのです。
ある商品の広告を依頼されたときの話です。クライアントさんに,「カッコイイデザイン,お願いしますね!」と言われました。「カッコ良くて売れない広告と,カッコ悪くて売れる広告とどちらがよいですか?」「そりゃあカッコ良くて売れる広告がいいです」「しかし,この商品はカッコ良くすると売れませんよ」「エエッ!?どうしてですか?」
実はその商品は庶民的な価格設定で,おばちゃんをターゲットにしていました。ですから,その人たちに買っていただくという目的に合ったデザインが必要だったのです。
目的に合わないデザインはターゲットとのコミュニケーションがうまくできずに,デザインの効果を発揮できません。カップ焼きそばの「ペヤングソースやきそば」のパッケージや,化粧品の「やっぱりDHCだね!」の広告は,私にはけっしてカッコイイとは思えません。しかしあれは正しいのです。大衆に受け入れられる使命を全うしている優れたデザインなのです(優れた造形,優れたセンスという意味ではありません)。
このことは,セールスプロモーションデザインはもとより,展示,サイン,CI,そしてWebにおいても皆同じでしょう。特にWebのデザインは,企業のコミュニケーション・ツールとして非常に重要な媒体です。モノをたくさん売る,イメージアップをはかる,とにかくビューを稼ぐなどサイトには様々な目的があり,それに合ったデザインが必要になってきます。目標を達成するには,コミュニケーション力を持ったデザインが必要なのです。
それではコミュニケーション力のあるデザインとは,どのようなデザインなのか。まずは,コミュニケーション力の乏しかった(?)Webサイト,旧IT Proのデザインを私がリニューアルしたお話をまな板に乗っけて,次回から考えていこうと思います。

そもそも「カッコイイ」とはどういうことだか、人それぞれ違うでしょうけど…