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 では,ミッションを使った行動のコントロールについて考えていきましょう。

 通常,人は誰でも「自分は正しい行動をしたい」と考えています。社会学などを学んでいくと「人間は社会的な動物であり,太古の昔から集団で生きていく特性が備わっている」といいます。人間は集団で生活をする社会的な哺乳類です。他人と上手くいかないことは「生存できない」という最悪な結果をもたらします。だから,社会性を持って他人と上手くやっていく特性を身に着けているのでしょう。。

ピグマリオン効果

 人間のこのような特性が「他人と上手くやっていきたい」との行動となって現れるのです。つまり,「自分は正しく生きている」,「正しいことをしているから非難されたくない」,「正しくないことをやっているから後ろめたい」などの感情として表現されます。

 この感情が重要なのです。人が何かを自覚するという行為は強烈な行動のエネルギーになります。たとえば,人を行動させるとき,私は以下のような趣旨の話をして,動機付けを行うことがあります。

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「君なら正しいことを行うと思っている。他の人間は君ほど大人でないからどうかと思うが,君は違う。私を助けてくれないか?」
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 多くの場合,このように言われた部下は頑張ります。自分が一番正しい行動をすることを上司は知っており,期待をしている。だから,部下は普段の行動がどうであれ,上司である私の期待にこたえようとするのです。これはピグマリオン効果(期待をすると,期待にこたえようと行動する行為)と呼ばれます。

反発させる言葉

 一方,自分は「正しい行動」と思っていることを,他人から「正しくない」といわれたり,否定しつづけると人はひどく反発し,ますます頑な態度をとることがあります。いわゆる「頑固」,「人に言われるのが嫌い」,「人の指摘を受け入れない」などといわれることです。

 しかし,いつまでも否定し続けると今度はだんだん行動が鈍くなっていきます。もう,嫌になってしまうのです。こうなると,動きは鈍く,モラールが低下していきます。

 人を駄目にするのには刃物は要りません。その人がやること全てを否定すれば,ほとんどの場合怒ってしまうか,ストレスをためて駄目になってしまうのです。このこともよく覚えておかないといけません。

人の行動をコントロールする行為

 このように,人の行動をコントロールするための一つの要素に(1)相手の正しい行動を褒めたり,期待したりする行為(行動させる行為)があります。逆に人の行動を停止させたり弱めたりするには,否定などのネガティブな言葉をかけることで実施できます。

 たとえば,部下のやっていることがよいことであれば「よいことをやっているね,もっとがんばれ,君らしいよい仕事だね」ということで,行動をさらに促すことができるのです。ここでのポイントは「君らしいよい行動」というように,本人ならではということを褒めることです。一般的な行動を褒めることでも効果はあるのですが,「君らしい」など特定した褒め方をすることで行動を促す効果は高いものになっていきます。

 反対に「それは意味がないからやめたほうがいい,やっても意味がない」というように否定をすれば人は行動の動機を弱めていきます。こうやって,行動を止めさせたり,弱めたりしていくことが可能なのです。

 このように,「行動を促す」,「行動を止めさせる」,「行動を停止させる」ということができれば,行動をコントロールできるようになります。これが,行動のコントロールの基礎です。

ミッションの意味

 人を動かすには彼らに「正しい行動」,「正しくない行動」を認識させる必要があります。それに使うのがミッション認識なのです。たとえば,「顧客を開拓する」という行為を考えてみましょう。通常,この行為は営業担当者には「正しい行動」になりますが,ITエンジニアには「正しい行動」にはなりません。これは,それぞれのミッションが違うからだと考えることができます。

通常,ITエンジニアのミッションは,システムを構築することです。だから,システムを作ることが「正しい行動」であり,システムを作らないことは「正しくない行動」なのです。

 ところが,ITエンジニアに「あなたは顧客を開拓しなければならない」というミッションを与えるとどうなるでしょうか?

 ノウハウ,スキル,知識は別にして,「何とか顧客を開拓しようと行動するようになるのです」つまり,ミッションを与えることで,人の行動がコントロールできるようになるのです。

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