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 この春、学校を卒業して社会人になられたみなさま、おめでとうございます。いよいよ、キャリアを歩みだされたわけですね。あれ?「ちっともめでたくなんかない。自由な学生生活が終わって、これから不自由な毎日が始まるなんて、あぁ憂鬱」そんな方もおらますか? 実は、わたくしがそうでした。

 広告に関わる活動に熱中し、学生生活をめいっぱい楽しんだわたしは、冴えない気分で社会人生活をスタートしました。朝から晩までシステム開発の基礎研修の日々、上司や先輩が熱心に教えてくださるにもかかわらず、当時のわたしは窮屈さや不自由さばかりが気になり、まるで休日だけを生きているという感じでした。(たくさんの方のお世話になり、おかげさまでその後どうにか実務を任せていただけるようになりました)

 お金(給料)と引き換えに、嫌なことでもしなくてはならないとか、命令に従わなければならないとか、何かを強制されるようなイメージが不自由さを感じる一因だったのかもしれません。また、わたくしの場合は「この場合はこうしなさい。あの場合はああしなさい」と標準的に決められたとおりにしなくてはいけないのが窮屈でした(後にその効用を知るのですが)。

 でも仕事を続けていくうちに、不変の「決められたとおり」というのがあるわけではなく、常に同じ命令をされるわけでも、逆に必要なことは必ず指示してもらえるわけでもないことが判ってきました。企業活動に関わる登場人物やその状況が刻々と変化し、それぞれが独自の意向をもっているので、「この場合はこうするのが正解」というのが明確に存在することなどほとんどないように思われてきました。同時に、だからこそ自分なりの考えをもって、その場に応じて「今度はこうしましょう」と提案することが大切で、それを求められていると今は感じています。

 はじめに手順やルールや型を学ぶのは、それらを知ること自体が最終目的ではなく(当面の目標ではありますが)、そのことを通じて「考え方」や「ものの見方」を養うプロセスが重要なのだと思います。そうだとすると、達人のやり方に基づく、標準的な手順やマニュアルがあることは、型にはめられるような窮屈さを越えてありがたく、そのおかげで、先人よりも早く一塊の仕事ができるようになり、自分流のものの見方を築いていくことができます。

 決められた手順どおりにやるのが窮屈だと感じる人は、自分らしい仕事をするためのステップのひとつとして捉えられるといいと思います。なぜそうなっているのか、その後どうなるのか、何の意味があるのかなど、自分なりに考え、周囲のひとにも遠慮なく確認して、理解を深めていくといいですね。

 逆に、定められた目標に向けて指示されたとおりに行動するのが好きな人は、仕事には唯一の正解があるわけではなく、常に誰かが目標を与えてくれるようなものでもないということを心に留めておかれるほうがよいでしょう。また、学生時代の専攻などによって、必ず原理原則に従って成り立つような、因果が明快に証明される世界に馴染んでこられた方にも、社会で起こることの大半はそうではないようですよと、旅のはじまりの留意事項として、ちょっと先に出発した者からお伝えしておきますね。(実際にその場に遭遇したとき、あぁこれかと味わってください)

 もしもあなたが学生さんなら、社会に出る準備として、資格取得などに勤しむだけでなく、学校で基礎的なことを学びながら、正解がはっきりしないものに対する自分なりの見方を磨かれることをお勧めします。自在で自律的な社会人としてのキャリアを歩むのに役立つと思いますよ。

 新入社員を受け入れる企業の側も、初歩的な資格ぐらいは取っておいてほしいと言ったりするわけですが、資格さえあればOKとか、マニュアルを叩き込めばOKという雰囲気が、無意識のうちに醸し出されませぬように。先輩や上司が、仕事の醍醐味や、お客さまや社会にどう役立っているかなどを、いいことも辛いことも含めて、自分の言葉で直接伝えるのが有効だと思います。煙たがられるのではと恐れずに、ぜひ。また、新入社員からみた新鮮な驚きや戸惑いに耳を傾けてみると、組織のあり方や仕事の仕方について、先輩側も改めて気づくことがありそうです。

 どんなタイプの人材を望むかはその企業の戦略に拠りますが、わたくしは、誰からも指示されないことでも、企業理念のもと、自らの考えをもって周囲を巻き込みながら推進していくようなひとが、環境変化の激しいときには適しているように思います。

 そんなわけで、社会人は、何でもかんでも命じられたとおりにするとか、決められたことだけをするとか、そういうものではありませんから安心してください。たしかに、多くのひとと協働するために、つまり一人ではできないことを実現するために、様々なルールもありますが、それらはただ不自由なだけではなく、自分の思いを実現するためにも有効です。基礎や組織の流儀を身につける期間もありますが、その間にもコミュニケーションやネットワークを大切にして、いろいろなひと(自分とは異なる感覚のひと)と接することが、自分なりのものの見方を養う助けになるでしょう。長いキャリアのスタート地点ですから、少し先の目標に思いを馳せ、明るさを大事に、一歩ずつでも前へ進んでいけるといいですね。

 それでは、今日もイキイキ☆お元気に。

Watcherから新人へ送るメッセージ