PR

馬場史郎さんの後ろ姿(左)と筆者(右)

 私がIT業界で出会った元気な人たちを紹介する記事は、いよいよ今回で最終回です。とっておきの人物を紹介しましょう。それは、SEのカリスマ、いやいやSEの神様とお呼びしましょう、馬場史郎さんです。馬場さんは、1965年に日本IBMに入社し、SEならびにSEマネージャとして活躍されました。1993年から萬有製薬の情報システム部に移り、1999年からはIT教育会社であるグローバルナレッジネットワークにて副社長を務められています。著書「SEを極める50の鉄則」と「信頼されるSEの条件 - SEを極める50の鉄則 実践編」は、SEのバイブル本として大ベストセラーとなっています(どちらも日経BP社刊)。

 私が馬場さんと出会うきっかけとなったのは、1993年に開催されたデベロッパー向けの大規模なカンファレンスでした。馬場さんの講演で、光栄にも私が司会をさせていただくことになったのです。カンファレンス開催前に馬場さんのオフィスへ挨拶に行ったときは、緊張して何も話せませんでした。名刺交換させていただけただけで感動しました。ああ、この人がSEの神様なんだ。

 いよいよカンファレンス当日となり、私は、馬場さんの付き人役も引き受けました。控え室に馬場さんが到着。さっそくソファーに案内し、コーヒーを運ぶ。講演までには、まだまだ時間があります。何か話しをしないと間が持ちません。自分の身の回りの話題をしたのでは、あまりにも申し訳ない。そうだ! 私は、いいことを思いつきました。講演の最後で、参加者から質問を受け付けることになっています。質問しやすい雰囲気とするために、最初に私がとっても簡単な質問をするというのはどうでしょうと相談すると、馬場さんは快く了承してくれました。ラッキー! それでは、簡単な質問の例を挙げるというのを口実に、私自身が知りたかったことを目いっぱい聞いちゃおう。

矢沢:すごく簡単な質問の例として「SEって何ですか?」というのはどうでしょう?
馬場:SEとは、簡単に言えばプログラマじゃない人のことだ。
矢沢:(うわ~っ、ビックリ! 私も、SEとはプログラマじゃない人ぐらいにしか思ってなかったけど、SEの神様の答えも同じなんだ)プログラマじゃないということは、プログラミングはしないのですね。それでは、SEの仕事とは何でしょう?
馬場:SEは、SEがしてはいけないこと以外なら何でもする。
矢沢:(う~む。これでは、わからないや。もっと突っ込んで聞いてみよう)それでは、SEがしてはいけないことって何ですか?
馬場:システムの価格をお客様に提示すること。それは、営業の仕事だから。
矢沢:なるほど! 受講者さんも納得の回答ですね(と言いつつ、自分が納得していた)。

 いよいよ講演が始まった。会場は、超満員だ。馬場さんの講演内容は、信頼されるSEがテーマだった。「技術偏重のSEになってはいけない。SEは、お客様のためになり、信頼されることが最も重要だ。お客様:自分の会社=51:49という比率で考えること」馬場さんは、およそ1時間ほど熱弁を振るわれた。

 質疑応答の時間になった。会場からは、一斉に何人もの手が挙がった。誰を選ぶか迷うくらいだ。最初に指名した30代ぐらいの青年は「SEをやってます。徹夜明けなのですが、どうしても馬場さんに会いたくて来ました」と発言した。とにかく馬場さんと話がしたいのだ。「現在開発中のシステムが暗礁に乗り上げて、どうにもこうにもなりません。どうしたら解決できるでしょうか?」という深刻な質問もあった。これは、難しい問題だ。はたして、SEの神様は、何と回答するのか? 馬場さんは「同じレベルのシステム開発の経験がある別の企業に頼むしかありません」とキッパリ答えた。ごもっとも! さすが、SEの神様だ。

 このイベントでは、開発ツールメーカーや出版社の展示会も併設されていた。馬場さんの本を30冊ほど用意していたブースでは、あっと言う間に完売になったそうだ。馬場さんは、展示ブースを1つひとつ丁寧に見て回って、説明担当者に話しかけていた。さすがだ。時間を無駄にせず、情報収集される姿に、またまた感動した。イベント終了後には、関係者を集めたパーティが開催され、馬場さんも参加された。写真は、そのときのものだが、残念ながら私とのツーショットは、馬場さんが後ろ向きになっているものしかない(変な写真でごめんなさい)。馬場さんは、パーティー会場の中を動き回って、若いエンジニアにもきさくに声をかけていた。SEの神様は、とっても優しい人なのだ。馬場さんとご一緒させていただいた1日は、私の人生の宝ものです。ありがとうございました!