社長ブロガーと話をしていると、ブログの効用についての意見交換になる場合がほとんどです。そんな時、よく交わされる話題のひとつは「ブログは求人に効果的である」ということです。

 社長ブログを見て応募する人は、企業の知名度・規模・処遇よりも、社長の夢や人柄、企業理念や働き甲斐に共鳴してくれる人が多いという意見が目立ちます。また、求人情報などで採用した人よりも「離職率が低い」「即戦力になる」「長く勤めてくれそう」という意見もよく聞かれます。

 私も、昨年末、社長ブログに7回連載で求人記事を書くことを試みました。新卒ではなく、即戦力になる将来の幹部候補の中途採用です。もちろん、求人募集のネットサービスや広告ほどの数は集まりません。しかし、これはと思える人材から応募があって驚きました。そこで、2名の採用が決まった後も、さらに1人追加採用のブログ記事を書き始めたところです。

 また、一方で、求職者から見ても、社長ブログはじめ、その会社内外から発信されるブログは、これまでの求人情報にはない生のデータで役立つはずです。求人情報は美化された一種の広告であることを、賢い求職者は見抜いているからです。

 そこで、今回は、求人募集にブログをどのように活用したら効果的か、求人側の視点に立って考えてみましょう。そこに、今後、企業が人材確保のためにやるべきヒントがあります。

まずは社長ブログで企業理念と社風を感じとる

 もしも、私が就職・転職を志している人だったら、志望業種・職種で候補企業群を絞り込み、人事部発信の「美しい求人情報」を読んだ後で、同業他社の社長ブログを見比べることでしょう。

 まず、社長ブログがあるかないかで、その社長の先見性やリーダーシップを想像することができます。社長の情報感度が高ければ、いち早く社長ブログの有効性に気づいて、既に試しているはずです。しかし、社長ブログはPR効果が大きい反面、失言時のリスクも大きくなります。ハイリスク・ハイリターンを承知で活用する度量と情報管理の技術が、社長自身と側近にあるかどうかがわかるのです。また、社長ブログの有無は、社風がどれだけオープンであるか、足を引っ張り合う文化はないかなどの見極めにも役立ちそうです。

 もし社長ブログがあったら、まずは黙って1カ月読んでみます。1カ月を待たずして、明日のブログが楽しみになるようなら、その社長は十分に魅力的で、自分との相性も良さそうです。そして、ブログを読む内に、その会社の商品を思わず「自腹で」買ってしまったとしたら、いつしか社長が語る企業理念や商品に惚れ込んでしまったのです。さらに、こんな社長の下で働きたいと素直に思えるなら、第一次審査は合格でしょう。

さらに広報ブログとの温度差を計りたい

 社長ブログがあるような会社なら、おそらく広報ブログがある可能性も高いでしょう。広報は、大企業であるほど、プレスリリースを淡々と出す傾向があります。どちらかというとリスク重視の守りの姿勢の会社が多いように見受けます。マスメディアへの対応や、リスクコミュニケーションも両にらみしながら、情報発信しますので、それも止むを得ないでしょう。

 しかし、先進的な広報ならば、身近なブログの特性を生かして、もう少し熱くストーリーを語っているかもしれません。また、コメント書き込みや、自らのブログとのトラックバックなども使いながら、人気ブロガーやネットワーカーとも緊密な関係を持とうとするでしょう。

 そんな姿勢が見て取れるならば、広報ブログにコメントや問い合わせメールを書いてみるのも良さそうです。その反応が、親切で納得できるものであれば、社長ブログと同じ体温と親密さを感じるようならば大丈夫です。顧客満足の追求や情報開示の徹底など、その企業の経営理念は社長以下かなり浸透していると考えられましょう。

直営ネット店舗で買い物をして店長ブログに書き込み

 また、ネットで直営店を持っている会社であれば、そこで買い物をしてみましょう。それも、ただトップメニューから買い物をするのではなく、店長ブログを熟読して、納得がいった商品を選びましょう。その上で、サイズ交換や返品など、少々、わがままな問い合わせやリクエストをしてみてはいかがでしょう?ちょっと意地悪な話ではありますが、そんなわがままメールに対して、どんな対応をしてくださるかで、社長の理念が店長にまで徹底しているかどうかわかるからです。

 そして、うまく買い物ができて、商品にもサービスにも満足がいったら、店長ブログにお礼のコメントやトラックバックを書いてみましょう。あるいはお礼メールを出してみましょう。それに対して、どんな反応や返信があるでしょうか?こうした、ちょっとした対応には、店長の人柄のみならず、法人の人柄も見え隠れしそうです。

社名+ブログで、社員個人ブログや風評ブログをチェック

 GoogleやYahooに企業名+ブログと入れると、様々なブログがヒットするはずです。

 もし戦略的に、社員に社名入りブログを書くことを推奨している会社ならば、社員ブログがずらっと並ぶことでしょう。それだけで、まず、ブログ時代のICT戦略を正しく理解していることがわかります。心ある社員のブログが、ネット上に点在することで、検索エンジン対策上、圧倒的に有利になるからです。

 さらに、社員のブログを拾い読みすれば、様々なことがわかるはずです。特に将来自分が就きたい部門や職種にいる先輩社員のブログは必読です。実際に、どんな業務をどんな権限を任されて執行しているか類推できるからです。さらに、適度に自分の趣味などを紹介しているとしたら、会社のルールでがんじがらめにするというより、個を尊重する社風なのかもしれません(あるいは社員ブログそのものに気づいていないのかもしれませんが....)。

 また、企業名+ブログで検索しますと、その会社に対する風評が書かれたブログも目にすることになりましょう。もちろん悪口は気になるはずですが、中には根も葉もない話や悪意に満ちたものも多いはずですので、その発信元の信頼性や他の記事のトーンを良く見て判断しましょう。

 大きな企業、有名な企業であればあるほど、一定量の悪口は書かれるのが普通です。むしろ、心から褒めているブログに注目しましょう。その中に、今まで気づいていなかった企業の美点が見つかる可能性があるからです。

社長名、主力商品名での検索結果も考慮する

 検索ついでに、社長名、主力商品名での結果もチェックしてみましょう。どのぐらいの数がヒットするでしょうか?上位にちゃんと社長ブログや商品ブログが並んでいるでしょうか?同業他社に比べて、その量と質はいかがでしょうか?

 社長名で検索すれば、新聞雑誌などのインタビューや講演録などが見つかる可能性も高いのです。それを読めば、社長の価値観や経営理念が、さらに明確になるでしょう。また、社長についてコメントしたブログも多数見つかるはずですので、合わせて読めば、多角的な視点で企業を理解できるでしょう。

 そして、主力商品名で検索すると、公式サイトと合わせて、取り扱いショップや、個人ブログがヒットするはずです。こうした社外のプロやリピーター客の評価は、その企業の将来性を暗示している場合も少なくありません。ぜひ熟読したいものです。

最後に社長あてにコメントやメールを試みます

 こうして、社長ブログから社内外のブログまで読み込みながら、志望企業の情報を総合的に判断して、なおかつ魅力的だとしたら、次にぜひ取りたいアクションがあります。それは、これまで読んだ社長ブログや、社内外のブログなどのスクラップブックを作ることです。

 感動した社長ブログや、社外ブログの褒め言葉はもちろん真っ先にプリントアウトしましょう。そして、少々耳が痛い苦言ブログなどもファイリングしましょう。そんな情報を社長やキーマンが知らない場合もあるからです。また、誤解に基づく風評があれば、自らコメントで正して、そのやりとりも印刷しておくと良いかもしれません。

 こうした情報を集めた上で、A4、1~2枚分で良いので、志望企業のネット上での評判について、ミニレポートを作ってみます。

 そして、ここからが本番ですが、自分が社長ブログの愛読者であり、さらに、志望企業の情報を集めに集めた結果、いかに御社を敬愛しているかを伝えなくてはなりません。履歴書代わりの個人ブログの魅力もきちんと伝えなければあんりません。

 私ならば、社長ブログにコメントやトラックバックが可能なら、それを活用します。社長ブログを愛読していること、同社を志望していること、情報を集め分析したので、ぜひお送りしたいことなどをお伝えするでしょう。その上で、上記のミニレポートやブログスクラップブックを、下手でも良いから手書きの封書を添えて、社長あてにお送りするでしょう。

 心ある社長なら、ブログに書いたメッセージに的確に反応してくれた愛読者を悪く思うことはないでしょう。また、社員に代わって、自社を思い、それに関わる未知のネット情報を教えてくれる入社志望者に感謝しつつ興味を抱くはずです。もし、私宛に、こうした熱烈な対応があれば、真っ先に会いたいと思うでしょう。

最後に~ブログを活用した理想的な求人システムとは

 現実には、まだ社長ブログを書く社長も、それを読む求職者も限られているので、求人活動におけるブログのインパクトは、一部の人にしか知られていません。しかし、これからは、その重要性を誰もが認めるようになるでしょう。

 それでは、ブログを活用してどんな求人システムを作れば良いのでしょうか?

 ここでも、結論は、以前ご紹介した「究極の情報共有組織:社長ブログが指揮する全社ブログオーケストラということになりそうです。社長ブログのタクトさばきで、各部門のリーダーもスタッフも、個性を発揮しながらも美しいハーモニーをかなでるようなブログコミュニティを目の当たりにすれば、感動しない入社志望者はいないはずです。

 リクルーターも大切でありましょうが、社内の幹部やスペシャリストが、自らの仕事とやりがいについてブログで熱く語れば、その人たちがリクルーターの役割を果たすのです。それぞれのブログの横に、求人募集の人事部サイトに飛ぶバナーなどをはっておけば、一石二鳥です。

 ただし、通常であれば、広報ブログが「楽譜」にあたる「プレスリリース」などを全員、タイミング良くめくる=提示する役を果たすところところですが、求人の場合、人事部が「楽譜」がわりの「求人情報」を発信するようになるでしょう。

 しかし、こうした仕組みだけでは、もちろん不十分です。オーケストラの魅力が、指揮者と楽団員の力量に左右されるように、社長以下、書く人そのものと書いたブログが面白くなければ台無しなのです。社長たるもの、これからは、人間力・構想力・経営力を兼ね備えた上で、それを文章や写真を使って上手に表現する力も要求されるようになるでしょう。だからこそ、部課長も役員も全員でブログを書いて慣れる必要があります。ブログの魅力=アクセス量や愛読者の質で、次期社長を、役社員やお客様が選ぶような時代も、いずれやってくるかもしれません。