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 試験がありましたね。春本番の4月第3日曜日、情報処理技術者試験を受験されたITプロフェッショナルの方も多かったのではないでしょうか。準備期間も含めて、お疲れさまでした。あとは結果を待つばかりというところでしょうか。

 せっかく頑張られたのですから、合格なさるといいですね。TOEICなどのようにスコアをみるものと異なり、この手の試験は合格or不合格のいずれか。そこでときには「1点の差で明暗が分かれるのだから全力で臨め」なんて叱咤激励されることもありますよね。なんだか進学塾みたいですけど。

 わたくしも役目柄「しっかり勉強して合格しましょう」などと言うことがあります。また企業としても「○○資格保有者○名」とPRする例がみられます。見えない価値を生み出す仕事ですから、「腕のいいプロフェッショナルが大勢いますので、安心して任せてください」と顧客へアピールするわけですね。また、「優れたITプロが、そこで仕事をしたいと思うような素晴らしい組織だ」ということも大切なメッセージかと思います。

 では、個人にとって資格を取得するというのは、どういう意味があるのでしょう。あなたは、何のために、忙しいなか勉強して試験を受けたのですか?

 わたくしも、情報処理技術者試験をはじめ、いくつかの資格試験を受けたことがあります。はじめのうちは勤務先で命じられて。入社したての頃でもあり、必ず合格しなければというムードのなか、勢いで試験を受けました。正直に申しますと、仕事にどう役立つのか、自分にとってどういう意味があるのか、その時はよくわかっていませんでした。情けないことに、次の段階の試験も、上司をはじめ周囲から強く勧められ「合格しさえすれば、あれこれ言われなくて済む」といった不届きな思いで受験しました。本来的な意味合いをよそに、当時のわたくしの意識レベルでは、資格取得は所属組織で穏便に暮らすために必要なことで、それが自分にとっての意味・価値でした。

 その後、時を経て仕事経験も重ね、周囲からの受験勧奨も静かになっていきました。そうしてキャリアを歩んでいるうち、ある頃から、仕事のなかで、なぜそうなっているのか、もっとうまい方法はないのか、同様の事例が世の中にあるのではないか、自分のアイディアは的はずれなのか、など考え込むことが増えてきました。職場のひとと話しても、必ずしもピンくるわけでなく。そこで、書籍を手にとったり、会社を超えたコミュニティに参加したりして、より広くいろいろなひとと会話をするようになりました。

 そうするうちに、知り合ったひと達との議論を深めるためにも、その分野に関する共通の言語や背景を理解しておく必要を実感するようになってきました。そこで、疑問や発見がある度に、関連情報にあたったり、セミナーなどにも参加して勉強をするようになっていきました。それらのなかには修了すると資格が付与されたり、そのプロセスに試験があるものもありました。

「通用する資格」、本当の目的は「通用する自分」

 このようにして得た資格は、資格そのものを取得するというよりも、そのプロセスで学ぶこと、つまり、自分の仕事にあてはめて考えたり使ってみたりするところに、わたくしにとって大きな意味がありました。いまにして思えば、社会人になりたての頃、資格取得の意義がわからなかったのは、自分の仕事に関して、もっと深めたいとか、良い方法を追求したいとか、そのために、広く世の中で議論されていることを知りたい、などの気持ちが芽生えていなかったためかもしれません。

 「世間で通用する資格がほしい」という声がありますが、それは「世間で通用する自分になりたい」ということですよね?でも、資格をもっていなくても大活躍しているひともおられるでしょうし、逆に資格は取得したけど仕事は未だいまひとつ、というひともおられるかもしれません。合格証を手に入れた瞬間に「世間で通用する自分」に変身するわけではなく、それまでに身につけたことや、それらを実際に使っていく過程で「世間で通用する自分」に近づいていくのでしょうね。

 ある職業につくために、またはある世界に参入するために必須の資格は、先ず取得しないと話になりませんが、「いつか役立つかもしれないから」と、なんとなく「お守り」や「保険」のように資格を集めても、それだけでは安心できない気がします。無いより有るほうがいいかもしれませんが、アピールするものが資格しかないようだと問題ですものね。仕事のなかで実際にしていることを資格という形で示すとか、取得を通じて身につけたことを使って、優れた仕事ぶりを発揮することが大事なように思われます。

 そんなわけで、昨日試験を受けられた方は、しっかり勉強されたのであれば、それ以前に比べて知識や理解が増したことでしょうから、そのこと自体がご自身にとっての進歩ですよね。合格はもちろんのこと、これからの仕事生活に、ぜひ何らかの良いものがもたらされますように。

 それでは、今日もイキイキ☆お元気に。