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 「このプロジェクトに関しての責任はすべて私にあるので,何かあったらなんでも言ってください」---プロジェクト発足のとき,私はプロジェクト・メンバーに対しこう言いました。インテグレータやソフトハウスのみなさんは,キョトンという顔をして最初は聞いているのですが,プロジェクトの最後には,その意味がわかっていただけたのではないかと思っています。

責任転嫁では解決しない,責任の自覚がよい結果を生む

 インフラの選定などを自分の責任で行うというのは,とても勇気がいることです。何があっても人に責任を転嫁することができないからです。

 しかし,自社のシステムがトラブルが起きたからといって,他社の人を責めても何の解決になりません。自社のサービスの品質に一番気を配るべきは,その会社の社員であり,そのシステムが止まることによる最終的な損害は,そのシステムを利用してサービスをしている企業が担うことになるからです。

 自分の責任でインフラやシステム構築を遂行することで,一つ一つの作業進行に関して慎重になります。何か起きた時の備えをあらかじめ考え,手配しておくようになります。社内の経営層やユーザーに対しても,開発や運用上のリスクとその対策などを説明し情報を共有することを心がけるようになります。

 結果として,トラブルが起きても迅速に対応できる運用体系が実現でき,システム部門とっても,ベンダーにとっても,社内のユーザーや経営層にとってもよい結果が得られるはずです。

 私個人としては,一番の褒美は,すべてを成し遂げたときの達成感であると感じています。細微にわたりすべてのシステムを把握している安堵感,そのシステムに対する愛着も,何物にも換え難い喜びです。

最終的な責任は企業のトップに

 システムの責任がユーザー企業にあるということは,その最終的な責任は企業のトップである経営層にあるということになります。

 昨年,東京証券取引所で発生したトラブルは,そのことを認識する好機であったといえるのではないでしょうか。トラブルの要因がなんであったにせよ,重要なのは社長が辞任したこと。経営責任が問われたことです。

 これまで様々な現場で,運用の工数もをカウントせず,問題が起こったときのみその対処を現場に要求し,責任はすべて現場に押し付けるという事態が横行してきました。

 東証の問題では,当初こそ「富士通の責任」という見解が示されました。しかし,西室会長が「責任は東証にある」とコメントされ,社長が辞任されました。現場ではなく,経営者が責任をとったことは各業界の経営者に大きな影響を与えています。

 システムトラブルすなわち経営責任という実例ができたことで,経営者はシステムをリスクとして認識するようになりました。システム部門の見直しも実施しやすい状況になっているといえます。

 もちろん,見直しは生やさしいものではありません。米国企業のシステム部門に比べ,日本企業のシステム部門は一般に弱小です。ユーザー企業の多くは,社内システムを支える基盤を外部の力に依存しています。

 責任を持って運用を主導する力をつけるためには,社内,社外を問わずITに関して認知していただくこと,人間のリソースを揃えること,揃えた人員を教育することです。これらは即効性が薄く,地道な努力が必要な上,多くの時間が必要です。経営層との二人三脚がどうしても必要不可欠です。そのためにも,私は経営層にシステムの重要さを訴え続けていきたいと考えています。