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 前回,「SEマネジャは一人でぶらっと顧客を訪問せよ」という話を書いた。今回は,筆者がなぜそれを主張しているのか,その“心”について述べてみたい。

 第一線のSEマネジャが自分の職務を全うするためには「顧客・部下・ビジネス」の3つに強いことが不可欠である。するとSEマネジャらしい仕事ができると確信している。このことに異論はないと思う。筆者は多くのSEマネジャを見てきたが,一人でぶらっと訪問できる人はその力を持っていると考えている。以下その理由について述べる。

 まず,一人でアポなしで顧客を訪問することを想像してほしい。SEマネジャは誰しも「あの顧客の部課長は会ってくれるかな。何を聞かれるかな。もしクレームを受けたらどうしようか。何か言われたらSEの責任者としてしっかり答えなければならないし…」とか,「会って自分は何を話そうか」などいろいろなことを考える。その自信があるSEマネジャは一人で気軽に訪問する。逆に,自信がない人は一人訪問を躊躇したり逃げたりする。いわゆる,団体訪問組や年始年末訪問組になる。

 営業のマネジャにそういった話をすると「とても理解できない,自信がなくても訪問すれば何とかなるものだ」とあきれられる。だが,SEマネジャはそうはいかないらしい。きっと顧客の方々から「技術の責任者」と見られているため,何か質問されるのが怖いのだろう。これは技術屋特有の心理で,分からないでもない。

 事実,一人で気軽に訪問するSEマネジャは「顧客の部課長の名前や,SEが仕事で関係している担当者の名前」などを知っているのはもちろんだが「現在のプロジェクトの状況や問題点や見通し,顧客の業界の動向や同業他社の動向,IT技術の動向,SEや営業の困っていることや仕事ぶり,提案システムの状況」なども実に良く知っている。自分の考えも持っている。またIT技術やアプリケーションも顧客の担当者やSEと話ができる程度の力もある。そして顧客の部課長の仕事にとって価値のある話ができる。時にはゴルフや野球などの話もする。

 きっと彼ら彼女らは,日ころ部下の仕事をレビューしたり,指導したり,営業と討議したり,IT技術やアプリケーションなどを勉強したり,など様々な努力をしているのだと思う。ここがポイントである。この一人ぶら訪問にSEマネジャがやるべき仕事がほとんど凝縮されているとも言える。

 当然,そんなSEマネジャは顧客やSEや営業から頼りにされる。部下やお客様も意見を聞く。発言力や影響力もある。部下やビジネスを引っ張れる。顧客や社内で少々の勝負もできる。即ち「顧客・部下・ビジネス」に強い。すると仕事もビジネスも上手く行く。

 だが,ここに注意点がある。SEマネジャの中には,自分がSE時代に担当していた顧客は一人で訪問できるが,そうでない顧客だと団体訪問組になる人が少なくない。また,大手顧客は訪問するが他の顧客には顔を出さない人もいる。だがそれでは合格点とは言えない。放っておかれた部下や顧客は困るからだ。全顧客を一人で訪問する難しさは分かるが,顧客数が10件や20件なら,筆者の経験では努力すれば何とかできるはずだ。

 ぜひ,SEマネジャは月あたりの訪問回数の目標値を決め,顧客別訪問予実表を作って一人訪問に挑戦することを勧めたい。それが今日の一言である。

お客様はSEマネジャの意見や考えを聞きたいものだ

 なお,SEマネジャに言いたい。お客様はSEマネジャにシステム開発の問題点や見通しなどについて意見を聞きたいものだ。それはSEマネジャはシステムの責任者だからである。

 また,顧客の部課長も定例会議など部下の前では聞けないことや言えないこともある。一人訪問して「1対1」で話せばそれができる。お客様は喜ぶ。その時,SEマネジャもSEや営業の前では聞けないことや言い難いことを話せば良い。すると当然お互いの信頼関係を築ける。信頼を得れば長年担当しているSEの異動もやり易い。体制図も出さなくて済むかも知れない。育成も考えたジョブアサインもやり易くなる,SEも喜ぶなどいろいろな効果がある。そうすれば,前々回述べたSEの変革の手がかりがつかめる筈だ。

 以上色々述べたが,“ぶらっと”はともかくとしても,一人で顧客を訪問さえできない団体訪問組のSEマネジャは,社内やお客様の期待にどの程度応えているのだろうかと思う。読者の皆さんの意見はどうだろうか。

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 なお,前回のブログで,一人でお客様を訪問した際に「お客様から文句を言われても,その場で約束をしてはならない」と書いたが,読者の方からその真意について質問を受けたので回答しておきたい。

 なぜその場で約束してはいけないのか。それは,顧客からクレームをもらった時に,SEマネジャがSEの意見も聞かず勝手に「分かりました。SEにやらせます」などと約束すると,そのSEの責任感ややる気をそぐからだ。

 第一線の仕事はSEを全面に出す,それをSEマネジャが支援する,これが基本的な考え方だ。そのほうが,仕事がうまくいくし,SEも成長する。ただ,大きなトラブルの時と,SEの勤務態度や人間性に関するクレームに対してはこの限りではない。