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 よく情報化投資の経済性について質問されるが,情報を価値に(金に)換える方法は3つあると答えることにしている。その3つとは。

 まず1番目。「情報は現場でしか金に換えられない」。

 顧客情報,例えどんな貴重な情報でもそれを使って現場の営業担当者が売上げを伸ばしてくれない限り,価値には成らない。研究成果,技術,ノウハウ,それは製品開発の現場がヒット商品作りに活かしてくれなくては売り上げには成らない。生産技術,これも製造の現場がこれで品質,コスト削減,納期短縮の実を挙げてくれなくては利益にはならない。現場とは情報を金に換える場の事と考えたい。

 世界中に経営資源を展開した本邦の大企業も,グローバル企業としてそれらの経営資源を効率よく管理運用できていない。語学の,特に日本語の問題もある。だからこそグローバルな情報システムが重要になる。

 在庫が見えず,生産計画もハッキリしない状態で,グローバル競争の最前線にある海外の営業部門は悲鳴を上げているのに,有効な行動計画すら持ち合わせていない例をよく見る。短時間で決断を迫られる現場に情報が開示されない。情報が開示されれば現場の知恵を働かせられるのに。これを開示しないのは経営判断ではない,情報システムが対応できないだけである。

 2番目は,「情報は,時間の世界で金に変換される」。

 時は金なりとはよく言うが,実に至言である。先んずれば人を制す,とも言うが。時間を縮めるということは本質的な価値を企業にもたらす。時間短縮がいかに社会変革も起こすことは,新幹線や高速道路が経済に与えた衝撃を見てきた世代には自明であろう。

 情報でビジネスプロセスの時間を短縮できれば必ずそれは金と等価交換できる。情報技術で製品開発の期間短縮,納期短縮,資金回収どれを取っても競争力や収益に直結する。企業情報システムは企業の各事業機能(部門)を流れている情報を扱うシステムである。

 小職はいつも,「情報に時制あり,過去形,現在形,未来形。未来形の情報処理が大きな価値を生むと。」と申し上げている。生産実績,売上実績,資金回収実績,と言った過去形情報,受注,出荷,請求等と言う現在形の情報,需要予測,生産計画,配送計画,そして顧客からの引き合い,という未来形情報がある。企業情報システムで最も価値を生むのは未来形の情報処理である。

 3番目は,「情報は知識に変換され価値を生み出す」。

 大量の情報は相互関係で整理,構造化され知識となる。知識とやる気が融合すると知恵となる。

 ここで企業とは何かと改めて問う。それは,企業とは情報の解釈と統合(編集)を1つの枠組みで行う集合体であるといえる。

 わかりやすいので,株の話を例にとるが,A証券,B証券の差は何か。それは情報をどれだけ収集して,それをどう解釈して,どう統合して,戦略に組み上げ行動に移すかである。

 戦略と行動は知識に変換された情報である。要するに,経済環境,証券市況はどの会社にとっても同じだ。にもかかわらず,A証券は買い,B証券は売り。これは情報の収集,解釈,統合,戦略の差異である。企業とは本質的に製造業にあっても,情報の解釈と統合,これを1つの枠組で行う集合体ということになる。

 いわゆる製品はその情報を運ぶキャリアーである。車やテレビそして衣服いずれも戦略に基づいた情報としての商品コンセプトを乗せて市場に送り出されるキャリアーである。

 送り出す人が,自分が市場に情報を発信していることを自覚せず物そのものを送り出していると認識しているとすれば,市場は発信している情報をうけとめることなど不可能だ。個々の情報に対する感性が重要である。

 素材産業としても商品の価値は情報であり,もし情報的に差異がなければ価値はコストだけに存在することになり,供給過剰の環境においては底無しの価格競争の世界になる。だから,ますます情報サービス・サポート機能が製造業でも重要な事業価値になる。