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 前回と前々回,SEマネジャの「ぶらっと訪問」について言及した。読まれたSEマネジャの中には「現在の自分はこれでよいのか」と改めて自分のあり方を考えた方や,「そんなことは理想論だ」と頭にきた方もおられると思う。


 また,SEの方々の中には「その通りだ,上司が一人で顧客を訪問したのを見たこともない」,「もっと上司は顧客を訪問して顧客に強くなってほしい」,「上司は我々が現場でやっている仕事を知らなくてよいのか」など日ころ上司に言えない不満を思い出し,内心溜飲を下げた方もおられると思う。


 かく言う筆者も20歳代は自分の上司に対してそんな苦い思いをしたものだ。上司が年始年末訪問組だったからである。


 そんなSEの方々には筆者は「皆さんがSEマネジャや多くの後輩を持つ立場になったら,部下や後輩に同じ思いをさせないようにしてほしい」と言いたい。それはSEマネジャの中には,往々に自分がSE時代に思った上司に対する不満や嫌な思いを忘れている人が少なくないからだ。いわゆる喉元過ぎればの類である。


 もちろん,上司に満足しているSEもいる。しかし不満をもっているSEも少なくない。「上司が顧客に来ない,営業に弱い,顧客に弱い,IT技術を知らないのに知ったかぶりをする,長年同じ仕事をやらせる,人事評価があいまいだ」などなど。中には上司のせいでやる気を失った人や,転職を考えだす人さえいる。そんなSEの気持ちにSEマネジャになったら鈍感になる人が少なくない,そして自分のSE時代の上司と同じやり方をする。筆者は,それが日本のSEの世界の悪循環の一つの構図のようにも思える。


 最近IT業界へ就職を希望する学生が減少気味だという声をよく聞く。その原因は産業界の景気やIT業界や企業のあり方の問題など色々あると思う。だがそれだけでなく,SEマネジャと部下との日頃の関係も理由の一つにある,と筆者は思うが暴言だろうか。


 その世界から脱皮し,SEがよりイキイキとした力のある技術集団になるには,SEマネジャは昔の上司と同じことをやっていては意味がない。「昔の上司がやっていないこと,できなかったこと」をやることだ。そうしなければ何も変わらない。


 やるべきことは諸々あると思うが,筆者は最も重要なことが「ぶらっと訪問」であると考えている。SEマネジャがこれさえできれば,SEの世界がそうとう変わるはずだ。SEマネジャの裁量で,SEのジョブアサインが,ビジネスと部下の成長を考えてできるようになる。部下も成長する。楽しく働ける。ビジネスも上手く行く。要は「ぶらっと訪問」をして顧客や営業から信頼を得ると,様々なプラスがある。SEマネジャの方々は,ぜひ自分のSE時代の気持ちを思い出して挑戦してほしい。


 最初は10点でも20点でもいい。恥をかいてもいい。理屈ぬきで継続してやっていれば,必ずお客様や部下や営業から信頼されるようになる。そうでないSEマネジャは部下と一緒に過去の歴史を繰り返すしかあるまい。だが,SEマネジャには会社の将来と部下の将来に責任がある,そのことを忘れないでほしい。


 また,明日をになう今のSE,特に中堅以上のSEの方々に言いたい。この「ぶらっと訪問」は皆さんが将来「○月○日付けで○○マネジャに任ずる」という辞令をもらったからと言って,翌日からそう簡単にできるものではない。今のSE時代から,IT技術のみならず顧客やビジネスに強くなるべき日ころの努力が不可欠である。例えば,お客様の部課長クラスの方とプロジェクトの状況の話をする。複数の顧客を担当する。多くのIT技術を経験する。修羅場を経験する。営業と販売戦略を考える。こういったいろいろな努力をすることだ。


 そして顧客とは何か,顧客や会社はSEに何を期待しているのか,などについて普遍的な考え方を身に付けてほしい。少なくとも「ITを良く知っているSE=優秀なSEだ」と錯覚したSE時代を過ごしてはならない。