Windowsの歴史は,機能拡張の歴史と言える。Windows 3.1時代はTCP/IPプロトコルすら標準ではなかった。Windows for Workgroupsが存在しなかった日本では,Windows 95が登場するまでTCP/IPプロトコル・スタックは他社から購入するものであった(マイクロソフト製のTCP/IPもあった)。TCP/IPを標準で備えたWindows 95にも,初期版にはWebブラウザは付属していなかった。Webブラウザが標準装備されるのはもう少し後である。
オペレーティング・システムに,どこまでの機能を持たせるかにはさまざまな議論がある。言うまでもなくWindowsは「リッチなOS」を目指している。そして,その対極にあるのがUNIX系OSであろう。UNIXは,多くのことを目指したMulticsの反省から生まれた。初期のUNIXは本当にプログラムをロードして実行することしかできなかった(らしい)ので「MulticsではなくてUnicsだ」と言われたのがUNIXの語源だという。Linuxもその精神を受け継いでいる。もっとも,Linuxディストリビューションには,さまざまな製品が同こんされているので単純とはほど遠いようだ。
個人的には,リッチなOSを支持するが,それも程度問題である。では,私の主観で必要機能と不要機能に分けてみよう。基準は「インフラ」あるいは「プラットフォーム」と考えられるかという点である。なお,ここで言うOSとはパッケージの意味で,カーネルの意味ではない。
TCP/IPプロトコルとソケット・インターフェイスは必須だろう。HTMLのレンダリングは基本機能だと思うので,Internet ExplorerのエンジンはOSの一部でいいと思う。前回紹介したRSSも同様だ。ただしUIはなくてもいい。Microsoft Updateなど最低限必要なWebアクセスにはIEのエンジンを使った別のツールを付ければいいと思う。今までInternet Explorerと同期してバージョンを上げてきたOutlook Expressは不要だろう。電子メールはOSが持つべきプラットフォームではない。そのせいか,Outlook ExpressはIE7のベータテストにも含まれていない。また,Windows Vistaから,Outlook ExpressはWindows Mailと名前を変えるようだ。
ファイルシステムや最低限のファイル管理ツールは必要だが,暗号化機能はどうだろう。暗号化を使う仕組みはOSと結合するしかないだろうが,暗号化アルゴリズムは切り離しても良いのではないか。例えばWindowsのログオン認証機能はGINAとして差し替えることができる。こういう仕組みはどんどん採用すべきだと思う。
電卓やメモ帳,時計,それにメディアプレーヤなんかはどうだろう。なくてもいいか,という気がする。実際,Windows XPには時計プログラムがない(Windows Vistaではサイドバーのガジェットとして復活しそうだ)。カレンダーもいつの間にかなくなっている。メモ帳がないと日常作業はかなりきついが,OSの一部ではないだろう。ただし,メモ帳くらい単純なツールであればOSと同時に提供されてもいいかな,と思う。MS-DOSの標準エディタEDLINだって,緊急時には役に立つ(もっとも,私はUNIXのedなら使えるが,EDLINは使えない)。ゲームなどのエンターテイメント系のソフトも不要だろう。
アクセシビリティ関連のソフトは必要である。拡大鏡やソフトキーボードは,視覚や手に障害を持つ人にとって有益である。以前,ハイコントラスト画面を使っている人を見たことがあるが,視覚障害の種類によっては非常に見やすくなるそうだ。障害者でなくても,片手で本を持って,片手でキーボードを打つとき,シフトキーの5回連打による固定キー機能は結構便利だ。
以上は私の主観である。みなさんはどう思うだろうか。