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 これまで数回にわたり「ぶらっと訪問せよ」について書いてきた。

 筆者が「ぶらっと訪問」を主張する背景には,筆者自身がSEマネジャ時代に狙った「ビジネスが伸び,人が育つSE集団作り」がある。一言で言うと「チームワークに富み,自発的に行動する少数精鋭の技術集団」である。

 キーワードは「チームワーク」と「自発的な行動」と「少数精鋭」の3点だ。

 どんなイメージの集団か。それは,周りから「あのグループは技術に強い」と評される技術集団だ。だが,単に強いだけではない。仲間が困っていたら自分の判断で自発的に互いに助け合う。社内はもちろん,必要ならそのSEの担当顧客に出かけて助ける。仕事のやり方は受身ではなく自分で考えて能動的に行動する。正しいと思ったら顧客の担当者とも喧嘩もする。

 筆者はSEマネジャ時代に部下が十数人いたが,目指したのはそんな組織作りだった。これまで筆者は日経コンピューターや拙書「SEを極める」や当ブログで色々とSEマネジャやSEのあり方を書いてきたが,その根底にはこの集団がある。

 当時,筆者が何をどう考え,なぜそんな集団作りを狙ったか,そしてどんな手を打ったかについて述べていきたい。ある意味のSEの改革論と言えるかも知れない。

 今のサービス・ビジネス時代は昔のハード時代とは違う。しかしSEの重要性はより高まっている。多くの読者の方々の参考になれば幸いである。

SE不足,技術偏重---SEを取り巻く問題

 まず筆者の当時のSEの状況を説明したい。当時も,現在と同様にいろいろな問題を抱えていた。

 まず慢性的なSE不足だった。SEの量不足か質不足かはケース・バイ・ケースだが,SEマネジャは新プロジェクトのたびに「SEがいない,SEが足りない」と言いながら体制作りに四苦八苦していた。

 そしてSEは超多忙だった。残業も恒常的だったし,ピーク時は徹夜もした。研修に出る時間もなかなかなかった。また,入社以来6年も7年も同じ顧客を担当しているSEや,長年同じ様な仕事ばかりしているSEもかなりいた。いわゆるSEの塩漬けである。大手顧客を担当しているSEに特に多かった。

 SEの体制図の要求や,常駐の要求もあった。主に大手顧客からだ。「SEの支援が悪い」と顧客の厳しいクレームもあった。無茶な要求をする営業もいた。そして,SEはその中でシステム開発,導入,保守や販売活動に一生懸命頑張っていた。

 当時も,技術に強いSEが優秀なSEだとする風潮があった。そのためか,技術偏重傾向や,仕事に対して受身になる傾向があった。チームワークに弱いSE,アプリケーションに弱いSEも少なくなかった。そのうえ,若手SEは先輩の下働き的な仕事が多く伸び悩んでいた。元気がないベテランSEもいた。

 これが当時のSEと,SEを取り巻く環境だった。問題意識の高いSEは「これで良いのだろうか」と酒の場などで熱い討議を闘わせた。SEマネジャ会議でもSEのあり方や役割がよく議題になった。おおまかに言えば,昔も今もSEが抱えている問題や,SEが苦労している課題は大なり小なり同じようである。

若手・中堅時代に担当した顧客でSEのタイプが変わる

 だが,個々のSEを筆者流に見ると,いろいろな傾向が見えた。



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 まず第一に,若手・中堅SE時代に大企業などの大手顧客を担当していたSEと,中小企業顧客を担当していたSEとではタイプが明らかに違った(図1)。IT技術に詳しいのは大手顧客側,視野が広いのは中小顧客側。受身的なのは大手側。技術偏重気味なのも大手側,アプリケーション指向は中小側,など若手・中堅SE時代にどんな顧客を担当したかによってSEが違った。

 次に,若手・中堅SE時代にシステム開発だけしかやっていないか,販売活動もやったかでも,受身的か能動的か,対人関係の弱さ・強さ,マネージメント傾向かスペシャリスト傾向か,などの違いがあった(図2)。

 これはあくまでも傾向値であり,大手顧客を担当しても中心的な仕事をしたSEは能動的だし視野も広い。中小顧客担当でも受身的なSEもいる。また先天的な能力をもっている例外的な人もいた。

 ただ,言えることは「SEの多くは若手・中堅SE時代にどんな仕事をしてきたか(図1と図2の組合わせ)によって育ち方が違う」言い換えれば「SEがどんなSEに育つかどんなSEになるかはSEマネジャがどんなジョブアサインをして来たかによって異なる」ということだ。

 この筆者の独断と偏見の理論を,これまで多くのIT企業で話したがほとんど反論はなかった。皆さんの周りのSEの傾向はどうだろうか。SEマネジャの責任はそれだけ重い。

 ただ,ビジネスはどうでも良いから「SEを育てるジョブアサインをやる」という論理はビジネス社会では許されない。ビジネスが全うでき,SEが成長するジョブアサインを,前述のSEを取り巻く環境も考え,時にはそれと闘いながらいかに実現するかである。「ぶら訪問」すらできずに,それができるだろうか。

 引き続き話を展開していきたい。ご質問・ご意見などがあればコメントをお寄せいただきたい。

 (次回に続く)